都立広尾vs都立東大和
都立東大和・藤原 涼君
初回に都立東大和の先頭打者藤村君がいきなり頭部に死球を受けて昏倒。担架で運ばれるというアクシデントで、15分中断するという形で始まった試合。それでも、藤村君は大事なく、その後の守りにもついて見守るスタンドからも拍手を浴びていた。一番遊撃手というチームの核になる選手でもあり、都立東大和としてはいきなりの出来事でドキッとしたことだったろう。また、当ててしまった都立広尾の渡辺 草太君も、それでひるんでしまうことはなく、以降も相手打者の内側にも思い切って投げ込んでいった気持ちの強さも立派だった。
都立東大和の藤原 涼君は、ブロック予選では2試合1対0というしびれる試合を投げ切ってきていただけに、制球力もあるし、点を取られない投手でもある。こうして、試合は投手戦の展開になっていったが、思いのほか早いタイミングで都立広尾に先制点が入った。
2回の都立広尾は、簡単に二死となったが、その後8番渡辺君と村田君と下位が連続四球で出る。ここで、1番石川君が左翼線に二塁打して二走が帰った。続く山田君も右前打して、村田君も帰して2点目となった。都立東大和バッテリーとしては、連続四球で「あっ、いけない」という気持ちになって簡単にストライクを取りに行ったところを狙われたという形になってしまった。
それでも都立東大和も3回には二死三塁から3番大野君が中前打して1点差とした。試合展開からは、次の1点がどういう形で入るのかというところが焦点となった。藤原君は4回を3者三振で退けるなど、失点後は再び本来のリズムを取り戻していただけに、都立東大和としては、何とか早い回で追いついておきたいところだった。しかし、都立広尾の渡辺君も5、6回と3人ずつで抑えていくなど自分の投球をしていっていた。渡辺君は、ややずんぐりとした体型にも見えるが、力のある投球でぐいぐいと投げ込んでくる力投型だ。
結果的に、次の得点を挙げたのは都立広尾だった。都立広尾は6回、一死後に四球と7番小笠原君の内野安打で一二塁とし、二死となってから、9番村田君がじっくりと球を見極めて右前打して二走の相沢君を帰した。さらに、その後に暴投もあって小笠原君も帰ってこの回も2点が入り、都立広尾がリードを広げた。
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力強い投球を見せた都立広尾・渡辺 草太君
このリードを都立広尾の渡辺君は9回に林君の二塁打で失った1点のみに抑えて逃げ切った。
前任の梨本 浩司監督が都立文京へ異動したことによって、今春から都立広尾の平原 啓太監督は、3人で都立広尾に赴任して3年目という若さだ。「梨本先生がベースを作っていただいていましたから」と、前任監督に敬意を表していた。試合展開に関しては、「お互いに3巡目あたりで勝負になるだろうなとは思っていましたけれども、思ったよりも早い段階で点が取れて、こちらのペースで試合が運べました。相手の土俵で試合をしたら勝てませんから」と言うように、先取点が大きかった。
グラウンドが狭く、ほとんど外野陣は自校では守備練習ができない状態ではあるが、この日は好プレーも出た。「ウチは現在は部員32人ですが、夏休みはBチームも作って、それぞれ15人前後で分けて、練習試合をしていきました。1日2試合をほとんど同じメンバーで戦うので、選手はハードでしたが、そのことで試合経験が増していきました。土井(崇史)先生がBチームを底上げしてくださっていることで、全体のチーム力も上がってきているのだと思います」と、この秋の好調ぶりの背景を証した。
一次ブロック予選では接戦を戦って粘り勝ってきた都立東大和だったが、福島靖監督は、「もうひと押し、粘り切れず、打ちきれませんでしたね。藤原が打たれることもあるんだから、点を取っていかないといけない…、ということ入ってきていたんですけれどもね」と、残念がった。そして、こう付け加えた。「こういってしまっては、いけませんけれども、自分自身がこの球場とは、ちょっと相性が良くないんです」
いずれにしても、序盤と終盤に無死で走者を出していただけに、都立東大和としては、いくらか悔いの残る戦い方となったことは確かだった。
(文=手束 仁)
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