学生の窓口編集部

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電車、カフェ、クリニックの待合室……どこへ行っても大多数の人が手元のスマートフォンに視線を向けている現代。必死の表情で手を動かしてゲームに興じている人も少なくありません。一度ハマるとなかなか抜け出せないスマホゲーム。運営会社側もさまざまな策を講じてユーザを手放さないような工夫をしており、ますますハマっていく人も少なくないようです。

子どもはもちろんのこと、大人もハマるスマホゲーム。単純に「面白いからやっている」ということはあると思いますが、心理学的にみると「ヘドニック・トレッドミル現象」という言葉で説明することができます。
スマホゲームはなぜハマるのか?心理学で読み解く「やめられない仕組み」
トレッドミルとは、フィットネスクラブなどでよく見るランニングマシーンのこと。延々と走り続けるトレッドミルのように、幸福感を得てもすぐにそれが薄れ「もっと、もっと」と欲望をつのらせ、行動し続けることをヘドニック・トレッドミル現象と言います。

たとえば、「あのバッグがあったらどんなに幸せだろう」と憧れ続けていたバッグを買ったとしましょう。そのときは幸福の絶頂でも、しばらくするとバッグを買った興奮も薄れ、友達が持っているもっと良いバッグを切望するようになる。そして、たとえそれを手に入れたとしても、しばらくするとまた幸福感は薄れ、さらに欲望が増していくのです。際限がありません。

スマホゲーム中毒は、まさにこのヘドニック・トレッドミル現象を起こしやすいものと言えるでしょう。クリアしたり高得点を取ったりすれば喜びが得られます。そのときはそれで終わりでも「クリアしたときのスカッとした気持ちをまた味わいたい」「もっと高得点を取りたい」とチャレンジします。レベルが上ったり、最高得点を更新したりするたびに幸福感は増しますが、それらはほどなくすると下がり、またその興奮を得るためにゲームをしたくなるのです。

ときに、仕事や勉強など日常生活も圧迫するほどハマる人も多いスマホゲーム。仕事をしなければ、勉強しなければと思いっつ、やめられずにいる人も多くいます。もしやめたいと思ったら、どうすればいいのでしょうか?

ここで「1日30分まで」「1日10プレイまで」等と時間や回数を区切っても、あまりうまくいかないでしょう。幸福感を得ることを中断された不快感は、さらにゲームへの渇望を増してしまいます。

心理学的に正しい方法は、今、スマホゲームにハマりすぎていることによって「何を失っているか」「どんな問題が生じているか」をしっかりと認識することです。仕事に集中して、より良い成果を上げられるのかもしれません。家族との時間を充実させることができるのかもしれません。紙に書き出してみるとなお良いでしょう。

その後、ゲームをスマホから削除します。またやりたくなっても、ダウンロードはしないこと。そして、「ゲームにハマりすぎてできなかったこと」に没頭するのです。

ポイントは、最初にしっかりと失ったものや問題点を認識すること。これができないと、またハマってしまいやすいのです。程よく楽しむのであれば、お手軽な暇つぶしとして楽しいスマホゲーム。自分ならではの、うまい距離感を保っていけるのが理想的といえるでしょう。

(文/赤木麻里)