トマトにもグルタミン酸のうま味たっぷり

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最近、“旨味”という言葉をよく見かける。海外ではそのまま「UMAMI」と表記され、いまや世界共通語になっている。

日本発の味覚とあって、日本人は旨味に対して敏感であるようだ。先ごろAISSY株式会社が実施した味覚力調査でも日本人の旨味正答率は71%だったのに対し、外国人の正答率は34%。実に2倍以上の差が出た。

旨味といえば和食の出汁などが代表的だが、実際はかなり幅広い料理や食材に対して使われている言葉だ。食のレポートなどでは「旨味を感じる」とか「旨味を引き出した」なんて表現はおなじみ。いったい旨味とは何なのか?

実は旨味には2つの意味がある。1つは単なるおいしさを表す表現としての旨味。日本語では「美味しい」ことを「旨い」というように、旨味とは日本人にとって美味しさを表す言葉のひとつ。その意味ではあらゆる食材に使ってOKといえるだろう。

一方で、甘味・酸味・塩味・苦味に続く5つめの味としての旨味もある。1908年に旧東京帝国大学(現東京大学)の池田菊苗博士が発見した、日本発の味だ。

2つの意味があり、しかもどちらもよく使われるので混同しやすいが、 NPO法人うま味インフォメーションセンターでは、日本語におけるおいしさの表現である「旨み」とは区別して、5つめの味を「うま味」として表記しているこれに従っているものも多いので、当記事でもこれ以降そう記載する。

現在、世界的な関心を集めているのは、もちろん後者の方。甘味・酸味・塩味・苦味に続く5つめの味としてのうま味だ。現在開催中のミラノ万博の日本館でも展示の中心テーマは日本食であり、その中に出汁やうま味にまつわる展示もある。

また、最近では航空会社の機内食にもうま味を活かしたものが増えている。機内では地上に比べて味覚が鈍るといわれ、従来は塩味を強めるなどして味付けを工夫していたが、昨今のヘルシー志向により塩味は控えめが望まれる傾向。そこで積極的に使われるようになっているのがうま味なのだ。

ところでなぜ、日本人はうま味に敏感なのだろうか? 前述の味覚調査を実施したAISSY株式会社代表取締役社長で『日本人の味覚は世界一』の著書でもある鈴木隆一さんいわく、「日本人は昔から、魚を食べてきました。島国である日本は海に囲まれており、豊富に魚を手に入れることができたため、魚を多く食べるようになったのです。海産物からは出汁が取れ、これはうま味の宝庫です。日本人がうま味に敏感なのは、このような食文化が背景にあります」とのこと。

もちろん、海外にもいろいろなうま味はある。ナンプラーやニョクマムといった東南アジアの魚醤もそうだし、中華料理なら骨でとった出汁には肉由来のうま味がたっぷり含まれる。

うま味とは、具体的にはアミノ酸の一種であるグルタミン酸やイノシン酸、グアニル酸のこと。ちなみにグルタミン酸を多く含むのは、昆布、トマト、アスパラガスなど。イノシン酸が多いのは、かつお節、牛肉、豚肉など。グアニル酸は干し椎茸や乾燥ポルチーニなどに多い。

意外なところでは、グルタミン酸は日本茶にも含まれる。お茶に対して、“旨味”という表現は使われるが、単に美味しいという意味だけでなく、味としての“うま味”もあるのだ。静岡県立大学食品栄養環境科学研究院 茶学総合研究センター長の中村順行特任教授は、「日本茶の味わいは、カフェイン、旨みをもたらすアミノ酸(テアニン、グルタミン酸など)、渋みを感じさせるカテキンが主な成分です。茶葉の栽培方法はもとより、同じ茶葉でも淹れ方によって旨みは様変わりします。昔から日本人は日本茶の旨みにこだわり続け、その繊細な味わいを楽しんできたのです」と話す。

旨みに対して優れた味覚を持つ日本人。ちなみに鈴木隆一さんの著書によれば、お米の甘さを感じられるのも日本人ならではの味覚なのだとか。せっかくなら存分に活用していろいろなうま味を楽しみたいですね。
(古屋江美子)