ライブドア(LD)事件で証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載など)の罪に問われた元社長、堀江貴文被告(33)の第14回公判が13日午後、東京地裁(小坂敏幸裁判長)で開かれた。検察側証人として証言台に立ったライブドアマーケティング(LDM、元バリュークリックジャパン)元社長、岡本文人被告(38)=分離公判中=は主尋問で、堀江被告に赤字見通しを報告した際、「『何とかして』と言われ、架空売り上げを計上してでも黒字化しろという意味だと思った」と述べた。

 岡本被告の証言によると、堀江被告は2004年9月上旬に行われたLDの戦略会議で、04年12月期決算が第3四半期(7−9月)までで2400万円ほど赤字になるとの見通しを当時のLDM社長から受けると、「何でなんですか。ここまで来たんですから、黒字化してください」と叱責。当時のLDMの営業活動では1月あまりで2400万円もの売り上げを上げるのは難しく、LDMの次期社長候補だった岡本被告は“架空売り上げを計上してでも黒字化しろ”という意味だと思ったという。

 さらに堀江被告は、岡本被告にも「何とかしてくださいよ」と指示。岡本被告は「『まじかよ。何で俺に言ってくれるんだよ』と思ったが、LDグループの最終意思決定者である堀江さんが言っているんだから、やらなくちゃいけないと思った」といい、承諾したと証言した。

 ただ、岡本被告には架空売り上げを実現するアイデアがなく、LD元取締役、宮内亮治被告(39)=分離公判中=に相談したところ、出会い系サイト「キューズ・ネット」に対する広告代金の名目で、1億500万円の架空売り上げを計上することになったという。

 結果、第3四半期までの売上高は7億5900万円になったが、岡本被告は「架空売り上げを計上した結果で、それがなければすべてが赤字だった」と証言。業績リリースにある「前年同期比で増収増益を達成し、前年中間期以来の完全黒字化への転換を果たしております」という記載については、「正しくありません」と語った。

 このほか、LDグループとして連結経常利益予想50億円を達成するために、岡本被告が当時社長を務めていた「EXマーケティング」でも1億2000万円の架空売り上げを計上することになり、「コールセンターを使ったキャンペーンをしたことにしよう」ということになったと証言。岡本被告は「04年9月期では、(連結で)だいたい14−15億の架空売り上げが計上されていると思った」と語った。

 また、岡本被告はライブドア・ファイナンス(LDF)から出版社「マネーライフ」を買い取る際、1億円とみていた本来の企業価値にLDFへの返済金などを上乗せし、4億円で買収したことを認めた。

中村被告、“山分け”の認識を否定

 同日午前は検察側証人のLDF元社長、中村長也被告(39)=分離公判中=への最後の尋問が行われた。小坂裁判長は女性コンパニオン派遣会社「トライン」を株式交換で買収した際、投資ファンドがLD株の売却で得た後に使途不明になっていた約1億5000万円について取り上げ、「野口(英昭エイチ・エス証券元副社長)、宮内、中村、羽田(寛・元LD取締役)で分けたんじゃないか。借りたといっても返していないんだから」と追及。中村被告は「そういう認識はない」と“山分け”を否定した。

 さらに小坂裁判長は「宮内から口止めされていないか」と質問したが、中村被告は否定。しかしトライン分の株の処分について、中村被告自身が堀江被告に説明したことがないことは認めた。

 中村被告はこれまでの公判で、この約1億5000万円は野口氏への報酬だったとし、うち4000万円を借りて宮内被告と半分に分け、1300万円は自分の生活費に、残りは羽田氏に貸したと証言した。宮内被告とともに高級外車フェラーリを購入したことも認めている。13日の公判では、羽田氏へ貸した金はまだ返してもらっていないことを明らかにした。

 次回公判は16日の予定。【了】

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