XFN-ASIAによると、中国人民銀行(中央銀行)はこのほど、民間銀行から吸収する資金量を示す預金準備率を0.5%引き上げ、8月15日から8.5%とすることを決めた。人民銀行は今回の措置についてウェブサイトに発表した声明の中で「我が国の経済には、不動産投資と貸し出し、貿易黒字の急激過ぎる拡大といった幾つかの顕著な問題がある。準備率の0.5%引き上げの主な目的は、流動性の管理を強化し、市中銀行による過剰な貸し出しを抑制し、経済の健全な成長を維持することにある」と説明している。今後の金融政策について、市場には準備率による一層の引き締めを予想する声がある一方、金融当局者は利上げについては可能性が薄いとの見方を示した。

今回の準備率引き上げ発表に先立つ18日に国家統計局は、4―6月期GDP(国内総生産)が前期より1.0%高い実質11.3%の高水準となったと発表している。人民銀行によると、今年上半期(1―6月)に金融機関が新規で貸し出した人民元建ての資金量は2兆1800億元(約31兆8000億円)で、すでに貸し出しの年間目標2兆5000億元の約87%に達している。同期の固定資産投資額も4兆2400億元で、前年よりも29.8%の大幅増だ。新しい準備率の8.5%は人民銀行が定める基準を満たした銀行のみの適用で、それ以外の銀行は9.0%。ただ、準備率操作は地方の協同組合には影響しない。

  人民銀行は4月末に2004年以来1年半ぶりとなる貸出金利の利上げ(現行5.85%)を実施し、7月5日にも預金準備率を0.5%引き上げたばかりだった。預金準備率の0.5%引き上げは6月時点を基準にすると約1500億元の吸収効果があるという。

  英スタンダード・チャータード銀行のエコノミスト、ステファン・グリーン氏は「今年の年末までに、預金準備率が10%まで上昇することも考えられないことではない」とし、一段の引き締め策が実施されるとみている。同氏の試算では今回の準備率引き上げは1600―1700億元程度の資金吸収に匹敵し、引き締め策としては利上げよりも影響力が強いとしている。

  一方で当局者は、今後の利上げについては消極的な姿勢を示した。中国証券報の報道によると人民銀行の余永定・通貨政策委員は週末に山東省・青島で開かれたフォーラムで「現状から判断すれば、中央銀行が金利を高くし過ぎる可能性は低い」との見解を明らかにした。元の価値を安定させるため海外から過剰に資金が流入しないように、元建てとドル建ての預金の金利差を2―3%に維持するという。

さらに余委員は「中国は基本的に資本規制を緩和する方向にあるが、(当面)中国は、投機的な(海外)資金流入の制限は放棄しない」と語った。マクロ経済の調整については、当局は様子見の姿勢をとり、今後2―3カ月の間に経済や貸し出しの伸びが減速すれば、一段の成長を抑制する措置は実施しないとの見通しを示した。【了】

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