XFN-ASIAによると、欧州航空大手エアバスでは、新型の超大型旅客機「A380」の生産遅延や親会社の欧州航空・防衛大手EADSの経営トップによる株式インサイダー取引疑惑で、社内外に動揺が広がっており、短期的には競争相手の米航空・防衛大手ボーイングに遅れを取ることが必至の情勢だが、米国の航空業界専門の調査会社リーハム(本社・ワシントン州サマミッシュ)のアナリスト、スコット・ハミルトン氏は、エアバスとEADSによる早期の経営トップ交代が、急速な経営体質の改善をもたらし、長期的にはボーイングに対抗することが可能になるとして、今回の人事刷新を評価している。  

  A380機の納期遅延による顧客離れや新型の中型旅客機「A350」の販売促進と設計変更など、エアバスには問題が山積している一方で、ボーイングは軽量で燃料効率や飛行性能が高いとされる次世代の中型機「787」(ドリームライナー)の受注が好調で、エアバスの混乱に乗じて、業績を拡大する機会に恵まれたと言えそうだ。ハミルトン氏は、「エアバスは不祥事が続き、ボーイングにとっては当面、すべてが追い風の状態。エアバスが立ち直るまで数年を要するだろう」と見ている。

  しかし、ハミルトン氏は、経営不振の元凶とされるギュスタフ・フンベルト前CEO(最高経営責任者)が早期に辞任したことを評価する。ハミルトン氏によると、ボーイングは1990年代後半に737型機を増産する一方で、新型機の導入を図って失敗し、生産危機に陥った苦い経験を持つ。このとき、問題となったのが先延ばしになった会社首脳陣の刷新だったという。ハミルトン氏は「新CEOのクリスチャン・ストレイフ氏(仏素材大手サンゴバンの元副CEOが、評判通りに生産面で高い手腕を発揮すれば、エアバスの再建も早晩、軌道に乗る」と指摘する。

  エアバスの親会社であるEADSの株価は3日、2日の経営陣の大幅刷新にもかかわらず、パリ証券取引所で前日比0.8%安の22.28ユーロで取引を終了した。【了】

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