テレビ事業失速からの回復を狙うソニー<6758>は、薄型テレビの商標を今秋以降、「WEGA(ベガ)」から「BRAVIA(ブラビア)」に変更し、低迷する同部門のテコ入れに力を注ぐ。また、現在液晶パネルを共同生産するサムスン電子と、パネルの開発段階から協力する方針も示唆されており、主力のテレビ事業建て直しの体制を整える。

  収益力回復が課題となっている薄型テレビについては今週初めから、世界で採用するブランドとして、「ブラビア」との新商標名を、オーストラリア、米国、それに中国ですでに公表した。1997年以降、ブラウン管テレビと薄型テレビの両方でメインブランドとして使用してきた商標「ベガ」は、基本的にブラウン管テレビのブランドに切り替えられる。ただ、米国など一部国・地域では、リアプロジェクション(背面投射型)テレビでの「グランドベガ」の名称使用を継続するなど、多少の重複は残る。新ブランドを立ち上げ、新旧テレビのブランド名を分離させることで、イメージ向上を図り、新生ソニーのイメージを打ち出す。

  一方、ソニーは今まで、液晶テレビの基幹部品である液晶パネルを、100%外部から調達してきたが、内製化を狙い、サムスンとの液晶パネル生産合弁会社S-LCDを4月に立ち上げ、4月19日に量産を開始した。さらに事業の相乗効果を狙うため、サムスンとの技術・開発を共同で行うことなどの話し合いが進められていると一部報道で伝えられている。ソニー広報部では「製造過程のなかで画質・コストの改善を行っていく」としており、現在、サムスンの液晶パネルをベースに製造しているS-LCDで、ソニーが液晶パネルの開発段階から参画していく意向が示唆された。コスト競争力と商品差別化の面で液晶パネルの内製化は課題となっていた。

  ソニーは、ブラウン管テレビの売り上げの急激な落ち込みと、低価格液晶テレビの発売で出遅れたことで、同社のテレビ事業は窮地に立たされている。同社のテレビ事業は2005年第1四半期(4−6月期)に392億円の営業損失を出しており、売上高も前年同期比20.1%の減少。テレビを含むAV・IT部門全体の業績も赤字に転落しており、液晶テレビ、液晶リアプロジェクションテレビ、ブラウン管テレビが業績の足を引っ張る構造がみられる。今回の新ブランド立ち上げによる心機一転で、巻き返しが図れるか注目される。 【了】