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 高校生とプロがガチンコ対決する前代未聞の企画「Chantasia Match Vol.o 横浜FC対日本高校サッカー選抜」が(3月1日 13時キックオフ/ニッパツ三ツ沢球技場)行われた。

 J2に所属するプロチーム・横浜FCに今年1月に開催された高校サッカー選手権で優秀選手に選ばれた選手を中心に構成された高校選抜チームが挑むという夢の企画。これらを実現されたのが、Chantasia LLPゼネラルプロデューサーの石山城氏である。

 そこで、『チャンタジアマッチ』に参加する横浜FCの会長であり、日本サッカー界のレジェンドでもある奥寺康彦氏と石山城氏の対談を、イベント開催前に行った。ビジネス界とサッカー界、互いにフィールドは違えど、熱い想いは同じ。業界を超えた白熱トークの一部始終をお届けする。

石山 はじめまして。今日はこのような場を設けて頂き、大変光栄に思っています。まずは『チャンタジア』という、わけのわからない団体の試合をお受け頂き、ありがとうございました。

奥寺 僕もスタッフから今回の話を聞いた時に「チャンタジア? なんだそれは」と思いましたよ(笑)

石山 普通、思いますよね(笑)。元々の成り立ちをご説明すると、弊社に沼尾という海外でサッカーをしていた人間がいるのですが、彼から『サッカーにコミットできる団体を作れないか』という話がありまして。僕は元々テレビ番組の企画・制作や広告の仕事をしていて、小学校から高校まで福島でサッカーをしていました。いまは経済産業省や外務省などを通じて、ASEAN(東南アジア諸国連合)とも仕事をしています。

奥寺 アジアはサッカー熱も高いし、経済面でもポテンシャルを秘めていますよね。

石山 そうなんです。ご存知のようにサッカーに限らず、ASEANとどう付き合っていくかというのは、日本のビジネス界の大きなテーマになっています。昨年はASEANでもっとも熱いといわれる『SUZUKI CUP』(ASEANサッカー連盟主催の国際大会)が行われたタイミングでもありましたし、日本のサッカーに、アジアから新しい風を巻き起こせないかなと思いまして。

奥寺 いいじゃないですか。

石山 そこで何かJリーグと日本のサッカーに貢献できることはないかと考えたときに、沼尾のご縁で横浜FCの藤原さん(執行役員/事業統括部長)と話をさせて頂いたところ、いいですねと。日程は3月1日と決まっていたので、考えてみたら『ゼロックス・スーパーカップ』の翌日ではないかと。高校選抜はゼロックスの前座で試合をするので、関東に来ている。これはいいと。僕は企画マンなので、おもしろいことをやりたいなと。そこで『高校生対プロ』の試合を実現させるために立ち上げたのが、チャンタジアという団体なんです。前置きが長くなり、すみません。

奥寺 いえいえ、そういう経緯だったんですね。

石山 最初に高校選抜の監督さんに話を持っていったら「高校選抜は欧州遠征を控えているので、遊びの試合だったらやらないよ。やるからには、本気でプロに挑戦させて頂きたい」と。奥寺さんは最初に「高校生と試合をする」と聞いたとき、どう思われましたか?

奥寺 最初に思ったのが、高校生とプロは力の差があるので、試合をしたところでチームの強化になるのか? ということでした。それと、こんなことがあってはいけないのですが、もし横浜FCが負けたらどうするのと。我々からすると最悪のシナリオですよね。

石山 横浜FCが高校生に負けたら、話題になると思いますが。

奥寺 話題にはなるかもしれませんが、絶対に負けてはいけない。それはあってはいけないことです。今季、監督が山口素弘から、スロベニア人のミロシュ・ルスに変わりました。チームの今後を測るためにも、開幕前の試合は大切です。個人的にはおもしろい試みだと思いますが、本音を言うと、普通は高校生とプロが試合をするのはありえないよね(笑)

石山 それでも胸を貸して頂ける、横浜FCさん並びに、奥寺会長の懐の深さを感じています。報道を見ていると『異例とも言われる静かなオフ』と言われていますが、今季の横浜FCは、具体的にここが変わるんだというところはありますか?

奥寺 今年、補強はほぼゼロです。若手を2人(DF楠元秀真、MF上田悠起)と期限付き移籍から戻ってきた選手が7、8人。これでなにができるか。やることはひとつしかない。まず守備をしっかりすること。そして次が攻撃。守備が揺らぐと点を取られてしまいますから。そこで引いて守るのではなく、積極的なディフェンスをしようと。開幕前のキャンプを見ると、守備は確立されて、選手の意識も高くなってきました。あとはいかに点を取るか。カウンターなのかセットプレーなのか。うちには個人で点を取れる選手はいません。スーパーな選手はいませんが、やりようによってはできると思っています。

石山 ぜひ、それを示してほしいです。

奥寺 レベルの差はありますが、今年の目標はアトレティコ・マドリーなんですよ。シメオネ監督が1年目は徹底して守備の土台を作り、カウンターやセットプレーで点を取った。2年目は選手を補強してチーム力がアップし、3年目はレアルやバルサと対等に戦うチームを作りました。横浜FCもそれを目指したいと思っています。

石山 静かなオフシーズンを過ごしながら、蓋を開けてみたら勝ち続けていくというのはワクワクします。

奥寺『チャンタジアマッチ』で高校生に勝って喜んではいけないけど、相手に何もさせないサッカーをしたいと思っています。相手にガンガン寄せて行ってボールを奪い、圧倒して攻めて行く。そういうシーンがたくさん出ればいいなと思っています。

石山 奥寺さんを前にして恐縮なのですが、個人的には、高校生が死に物狂いにやって『高校選抜も意外とやるじゃん』というのを見たいんです。

奥寺 自分が監督だったら『立ち上がりから速いプレッシャーをかけて、相手にやらせるな。ガンガン行け』と言いますよ。そうすれば、高校生は自分たちのプレーができなくなりますから。そこでプレスをかわされて、やられたらダメですが(笑)。それは冗談で、いままでの練習を見ていると、ルス監督は着実にチームのベースを作ってきているし、選手に対する意識付けもしています。いい緊張感を持って開幕を迎えられると思うので、楽しみですよ。

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