「京都大学合格高校ランキング」私立大と一部の国公立大は大学公表のデータ。合格者数を公表していない国公立大については高校発表のデータを使用、大学通信とサンデー毎日の共同調査。(協力/大学通信)

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■京都大人気に異変! 大阪・橋下改革は不発

今年の京都大の合格者高校別ランキングでは、洛南が24年連続トップとなった。合格者数は79人で、昨年に比べて9人減だった。2位は昨年と変わらず西大和学園、3位には大阪府立の北野、4位は昨年の8位から躍進した洛星、5位は大阪星光学院と東大寺学園となった。近畿圏の一貫校と公立トップ高が上位を占める状況は、変わっていない。

関西の一貫校の京都大合格者の増減は、東京大や国公立大医学部医学科の合格者数と連動しているケースがしばしば見られる。今年もトップの洛南は京都大が9人減だったが、東京大は7人増。東大寺学園は京都大は12人減だったが、国公立大医学部医学科が18人増だった。優秀な生徒がどこを目指すかで、毎年、大学合格実績が動くということだ。

西日本とりわけ近畿地方では医学部人気が高い。公立トップ高より中高一貫校での人気が高いのも特徴だ。洛南、東大寺学園、甲陽学院などは、京都大合格者数より国公立大医学部医学科の合格者数のほうが多い。保護者に医師が多いこともある。入試全体で理系人気だが、トップ校では医学部人気と等しいという。そのため、京都大ランキングの上位校の合格者数は、増えていかないのだ。

一方、今年、注目されたのが大阪の橋下徹前知事が肝いりでスタートさせた府立高10校に設置した、進学に特化した文理学科の初卒業生の実績だ。大いなる成果が期待されたが、北野は京大に71人合格で昨年より6人増、天王寺が47人で昨年より9人減、大手前が29(昨年比−6 以下同じ)人、三国丘28(+2)人、茨木20(+7)人、四条畷14(+3)人などで、今ひとつの伸びだった。文理学科は学区がないため、北野、天王寺に人気が集中している割には、実績はそれほどでもなかったとの見方が多い。地元塾関係者がこう話す。

「北野は今年、合格者が80人台になってもおかしくないと思っていましたが、意外な結果でした。ただ、大阪では公立高人気が高いこともあり、また生徒が目指す進学先にしても中高一貫校ほど医学部人気が高くないので、今後、京都大の合格者が増える可能性は高く、北野がランキングトップになる日は、そう遠くないと見ています」

■ノーベル賞・山中教授人気で全国から学生が集まる

大学入試全体を見ると、経済不況もあって地元の大学への進学志向が強まっているが、その中で京都大は地元の割合が下がってきている。今年の近畿圏からの合格者の割合を見ると51%で、5年前の55.3%を下回っているのだ。地方で合格者が増えたところを見ると、熊本が昨年の7人から21人の14人増、同じく南山(愛知)も5→19人の14人増、東海21→34人の13人増などとなっている。それだけ全国で人気が高まっている。この理由はiPS細胞を発見しノーベル賞を受賞した現役の山中伸弥教授の影響がもっとも大きいが、入試改革で工学部が第2志望を認めるようにしたり、学部の中で入試科目を統一したりして、受験生に分かりやすく、受けやすくしてきたことも大きい。

また、今年は首都圏(1都3県)の合格者が多かったのも特徴だ。西15人、麻布13人、千葉・県立12人、湘南11人、聖光学院9人、駒場東邦7人など。塾関係者が言う。

「都立トップの日比谷、一貫校トップの開成や筑波大付駒場はそれこそ大学もトップの東大志向が強まりますが、その次のレベルになる西や麻布となると、自由な校風ということもあって、東大一辺倒ではなく京大志望者が増えるのでしょう」

今年は東京大で近畿圏の合格者の割合が高まり、京都大で首都圏の合格者の割合が高まった。大学入試全体では地元志向が強いが、理系を中心にトップ層では、地元以外の難関大志向が確実に強まっているようだ。

かつては首都圏でも東京大がダメなら京都大に志望変更、などという動きがあった。しかし、今はそのような動きにはならないという。東京大に点が足りないなら東京工業大、一橋大に志望変更するのが普通だ。首都圏から京都大を目指す受験生層は初めから京都大志望で、学力はかなり高いのだという。その結果、合格者も増えているようだ。また、首都圏の女子校からの合格者も多い。中学受験に詳しい専門家が言う。

「女子学院5人、豊島岡女子学園とフェリス女学院が3人など、首都圏の女子校から京大に合格しているケースが目を引きます。学力の高い女子生徒の保護者は、子どもを手元に置いておきたいとあまり思わず、子どもの自由にさせて社会の第一線で活躍することを応援する姿勢なのでしょう」

近年、京都大の人気はぐんぐんアップしている。16年にはAO入試や推薦入試を実施し、今まで以上に入試改革に力を入れる。ただ、東京大と同じく、京都大の理系学部より国公立大医学部医学科を目指す優秀な受験生は多く、それをどう京都大に目を向けさせるか、中身の充実も大切になってきているようだ。

(大学通信 安田賢治=文 浮田輝雄=撮影)