「ブルーマウンテン」は、しばらく飲めそうにない...(写真は、イメージ)

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高級コーヒーとして、日本人に愛されている「ブルーマウンテン」がしばらく飲めないかもしれない。

UCC上島珈琲は「ブルーマウンテン」を使うレギュラーコーヒー5種を在庫がなくなりしだい販売を休止することにした。キーコーヒーはすでに2014年8月から順次販売を休止している。コーヒー愛好家にとっては、ガマンを強いられそうだ。

「深刻化したのは3〜4月ごろから」

「ブルーマウンテン」は、ジャマイカ共和国にあるブルーマウンテン山脈の標高1200メートル近くの限られた地域の、過酷な環境で栽培されるコーヒー豆のブランド。厳密な検査によって選別された豆は香りが高く、繊細な味といわれ、輸出の大半が愛好家の多い日本向けという。収穫量は極めて少なく、高価なことでも知られる。

そんなブルーマウンテンが、町の喫茶店や、自家焙煎のコーヒー専門店や量り売り、スーパーなどの店頭から続々と消えている。

コーヒーメーカー大手のUCC上島珈琲は、ブルーマウンテンの販売を在庫がなくなりしだい休止すると、2014年9月25日に明らかにした。

同社は9月1日、仕入れ値の高騰を理由に、ブルーマウンテンを使った家庭用のコーヒーを約4割値上げした。それから、およそ半月。収穫されたブルーマウンテンの生豆を現地機関が精製したところ、規格を満たす品質の豆が少なかったことから、「品質の維持や安定供給がむずかしい」と判断。販売休止に踏み切った。

UCC上島珈琲は1981年にジャマイカのブルーマウンテンエリアに「UCCブルーマウンテンコーヒー直営農園」を開設し、高品質なコーヒーの安定供給に取り組んできた。「販売休止に至るケースは、めずらしい」と話している。

キーコーヒーも全国に70か店ある直営ショップで販売している「ブルーマウンテン」ブランドのコーヒーを8月以降、品切れになりしだい休止。「現在、直営ショップに在庫はありません」と話す。

同社は2013年12月に、全国の直営ショップなどで「珈琲探訪 ブルーマウンテン NO.1 クリフトンマウント農園」を限定発売。100グラム2310円(税込)での販売だったが、スピード完売したという。

じつはこのとき、すでに町の喫茶店や自家焙煎のコーヒー専門店などではブルーマウンテンの生豆の入荷が止まり、販売休止を余儀なくされる店が相次いでいた。キーコーヒーによると、「深刻になってきたのは、3〜4月ごろから」と話している。

生豆が収穫できるまでは3〜4年かかる

ブルーマウンテンの販売休止の原因は、2012年10月にジャマイカやアメリカを襲ったハリケーン「サンディ」に遡る。このとき、多くのコーヒーの木が倒れるなどの被害を受けた。

さらに2013年、コーヒーの葉の光合成機能を奪い2〜3年で枯らしてしまう、強い伝染力をもつ「さび病」や、コーヒーの実に入り込んで卵を産み、ふ化した幼虫が種子(コーヒー豆)を食べてしまうコーヒーベリーボーラー(CBB)などの病虫害の被害が追い討ちをかけた。

UCC上島珈琲によると、「2014年度のブルーマウンテンの生産量は前年に比べて半減する見通し。直近10年の生産量のピークである2007年と比べると5分の1に減少しており、需給がひっ迫しています」としている。

ブルーマウンテンの販売再開について、同社は「2015年2月ごろから始まる収穫の状況を見極めて、早ければ来春からの販売再開を目指したい」という。

とはいえ、「ハリケーン被害で残った木から、どの程度収穫できるかにかかっているのですが、どこまで販売できるかは現段階ではなんとも言えません」とも漏らす。

一方、病虫害による被害から、現地では幼木を植えるなどの「再生」を進めているが、こちらも収穫までは3〜4年かかるとされる。

どうやら、ブルーマウンテンはしばらく「お預け」のようだ。