富士山頂の住所は静岡県? 山梨県知事が国土地理院に「誤解与える」と是正求める
山梨県か静岡県か、県境が定まっていない富士山頂について、国土地理院がインターネットで公開する電子地図で山頂を「静岡県富士宮市」と表示したことに対して、山梨県の横内正明知事が「不適切」と、噛みついた。
なにしろ、富士山頂の県境問題は江戸時代から400年以上も続いている難題。インターネットには、山梨県民だろうか、「ホントに静岡なのか!」「富士山は山梨でいいよ」「富士山の写真はだいたい山梨側だよね」などといったコメントが寄せられている。
富士山頂は「境界未定地」のはず…
山梨県と静岡県の県境にそびえ、日本のシンボルとして国民から親しまれている富士山。その山頂が山梨県、静岡県のどちらにあるかについては、これまでもしばしば取り沙汰されてきたが、未解決のままだ。
しかし、2013年に富士山が世界文化遺産に登録されたのをきっかけに、融和ムードが加速。山梨県の横内正明知事と静岡県の川勝平太知事は14年1月、県境を定めず富士山の保全に協力していこうと明言していた。
いわば、いったん「棚上げ」にしたのだ。
ところが、そんな関係にヒビを入れたのが国土地理院。同院のホームページで公開している電子地図(地理院地図)で、富士山の国内最高地点の剣が峰(3776メートル)の住所が「静岡県富士宮市」と表示されている状態にある、と2014年6月2日付の朝日新聞が報じた。
この電子地図の地形図は、13年10月から地図上の場所を指定すれば住所や緯度・経度、標高などを表示する機能が加わった。
朝日新聞によると、境界未定地の部分の表示は、富士山研究で知られる明治大学非常勤講師(地図学)の田代博さん(64)が気づいたそうで、山頂周辺と火口の南側を静岡県富士宮市と、小山町と御殿場市、火口の北側は山梨県鳴沢村や富士吉田市と表示。住所表示をたどると、火口を南北に分ける「県境」が引けるという。
この事態に、山梨県の横内知事は6月3日の記者会見で、「富士山の山頂付近については『境界未定地』ということ。それにもかかわらず山頂が静岡県と決まっているかのごとく誤解を与えるような表示は、行政機関のホームページとしては適切でないと判断をしています」と語り、国土地理院に対して「是正を要請したい」との考えを明らかにした。
山梨県民もかなり怒っているのだろうか、改めて県庁に聞いてみると、
「県境が山梨側でないから、『不適当』といっているのではありません。現状では、静岡県とも境界未定地のままで支障なくやっていますし、『決まっていない』のだから適当でないというのです」
と、主張。県境を「山梨県側にしてほしい」などと話したことはないとしている。
現時点で県境をはっきりさせようとは考えていないようだ。
日本の県境問題は14か所で起こっている
一方、国土地理院も、通常の地図では富士山頂の山梨県と静岡県の県境は書かれていない。電子地図での住所表示機能では「境界未定地」は付近の場所が表示されるので、山頂の県境が「確定したわけではない」としている。
じつは現在、県境が定められていない「境界未定地」は、富士山頂を含めて日本に14か所ある。
富士山頂(山梨県鳴沢村と静岡県富士宮市)に近いところでは、ふもとの山梨県富士吉田市・山中湖村と静岡県小山町の境界線。北は宮城県蔵王町・川崎町と山形県山形市・上山市に、南は宮崎県小林市・えびの市と鹿児島県湧水町の県境。東京都江戸川区と千葉県市川市・浦安市、東京都葛飾区と埼玉県三郷市の都県境もある。
どこも富士山頂と同様に、複雑な地形や歴史的な経緯、住民感情などの要因で、なかなか解決できないでいる。国土地理院によると、県境は14か所だが、市町村などの境界線をめぐる争いは、「すぐには数えきれないほどあります」と話している。