ザッケローニ監督は「スグに召集される選手もいれば、少し時間をおいて招集される選手もいるだろう」と試合後にコメント (撮影:岸本勉/PICSPORT)

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 スタメン表を見たときには、「やっぱり」という思いを抱いた。同時に、そこはかとない物足りなさを覚えた。

 オーストラリア戦から中2日という日程を考えると、1週間の休養があった中国戦の先発で臨むのは妥当だ。韓国のほうが試合間隔が一日長いことを考えても、コンディション重視のキャスティングになったのだろう。

 本音を言えば、柿谷と豊田の連携を長く見たかった。齋藤も使って欲しかった。物足りなさの理由がそこにある。

 序盤から押し込まれた。優勝するためには勝利が絶対条件で、2試合連続で無得点に終わっている韓国が、アグレッシブに攻めてくるのは想定内である。

 選手の声が記者席まで届いた過去2試合と違って、ピッチ上でのコミュニケーションさえままならない。3試合目にして初めて迎えたアウェイの雰囲気も、このゲームを難しくした。

 最初のポイントは、前半の残り10分にあったと思う。
 24分に柿谷の一発で先制しながら、33分に同点とされる。大会初ゴールをあげた韓国は緊張感がほぐれ、スタジアムのテンションはさらに高まった。

 同点に追いついたホームチームは、前半のうちに引っ繰り返したいと考える。実際に韓国は勢いを強め、日本は先制点以降1本のシュートも打てていない。そもそも前半のシュートは、柿谷のゴールのみである。自陣での攻防が圧倒的に長いなかで、前半の残り10分強をしのいだのは勝点3奪取の布石となった。

 ふたつ目のポイントは、相手の選手交代に混乱しなかったことである。

 オーストラリアとの第2戦では、相手がFWを入れ替えてきた直後に2失点を喫した。この日のメンバーはオーストラリア戦と違うが、チームとして教訓を生かしたのは評価できる。韓国の選手交代が、率直に言って効果的でなかったところはあるが。
公式記録に記されたシュートは、5対9である。韓国のシュートはもっと多かったように感じるが、日本はこれぐらいだろう。守備の時間が圧倒的に長いゲームで、内容を伴った結果とは言い難いものの、それでも勝ち切ったのは経験値の少ない選手に自信をもたらす。どちらもベストメンバーでないとはいえ、アウェイで勝利と優勝カップを手にするのは簡単なことではない。

 即席のチームとして臨んだ今大会だったが、わずか10日強でまとまりのある集団へ変貌していった。2対1とリードした後半終了間際、控え選手は肩を組んで戦況を見つめた。チームとしての一体感を表す光景だ。大会のスケールは異なるが、国内組に数人の海外組を加えて臨み、大会連覇を成し遂げた2004年のアジアカップを思い起こさせた。

 海外組を追いかける立場の彼らは、代表に定着しても控えからのスタートになる。そこでは、グループの一員として貢献できるかが問われる。

「出場時間に関わらず、取り組む意識や代表への思いなども注意してみていきたい」

 大会前にザックはこう話していたが、個々の姿勢については漏れなく及第点がつけられるに違いない。

 東アジアカップ後の生き残りでは、大会得点王となった柿谷が鮮明なる解答を弾き出した。2ゴールをあげた韓国戦後、「シュート2本しか打てていないのが情けない。もう1、2点は取れたと思う」と本人は厳しいコメントを残しているが、海外組がいるチームでも、その試合のファーストチャンスを「惜しい」で終わらせてしまうことが少なくない。結果的にそれが、敗因につながってしまうことも。

 好機を作り出せなかったのは反省材料としても、チャンスを確実に生かしたのはアピールポイントになる。

 選手は結果を残した。次はザックがどうするのかだ。

 引き続き1トップで、柿谷を起用するのか。2列目のジョーカーからチームに馴染ませていくのか。東アジアカップの収穫をどのようにブラジルへつなげるのか、指揮官の手腕が注目される。

■東アジア杯/第3戦/2013年7月28日
日本 2−1 韓国
(会場:韓国・蚕室総合運動場)