WBCの興奮冷めやらぬなか始まった、第85回センバツ高校野球。昨年の藤浪晋太郎(阪神)、大谷翔平(日本ハム)級の超目玉はおらず、「今年はいないねぇ……」と、不作を嘆くスカウトが続出した。だが、そんな“開店休業”状態のスカウト陣を黙らせたのが、将来の侍ジャパン候補に躍り出た2人。投手の安樂智大(済美)と捕手の森友哉(大阪桐蔭)だ。

187センチ、85キロと堂々たる体躯を誇る安樂は、2年生ながら「今秋のドラフトでも間違いなく1位」とスカウト陣は声を揃える。左腕を大きく突き出す豪快な投球フォームからの力強い直球は、「尾崎行雄や江川卓、伊良部秀輝のようだ」と往年の名投手を引き合いに出すスカウトもいるほど。無限の将来性に期待が集まる。
一方で、初戦で232球を投げるなど、3連投を含む5試合に登板して計772球。決勝も疲労で精彩を欠くなど、故障を心配する声も多かった。

捕手の森には、スカウト陣から「うちの捕手よりひとランク上。今でも十分にレギュラーでやれるし、使いたい」「捕手の手薄な球団ならすぐにでも使える」「あれだけの選手なのに自分が目立とうというのがない。常に冷静で視野が広い。投手が安心して放れる空気を作れる。完成度が高く高校生ではないね」と絶賛のコメントの嵐が。“阿部慎之助2世”の呼び声もあるほどだ。

この2人に続くのが外野手の上林誠知(中堅手・仙台育英)。走攻守3拍子揃い、今大会No.1野手の評価。「ミートがうまいし、広角に打てる。稲葉篤紀に似てるね」(パ・スカウト)。強肩と正確なスローイングにもスカウトは好印象を抱く。

二塁送球1秒8台と、プロレベルの強肩でスカウトの目をくぎ付けにしたのは若月健矢(捕手・花咲徳栄)。試合展開によっては気を抜いたりしがちなイニング間の送球を全力で行う姿勢も好評価の一因で、「身体能力と馬力、強肩は突出している」(パ・スカウト)と上位指名候補に。

いぶし銀的な存在として名前が挙がったのが遠藤康平(遊撃手・常葉菊川)。守備範囲は広く安定感抜群。「打率2割3分でも、彼が守っていれば監督としてはいちばん安心できる選手になる」(セ・スカウト)。打撃でも2試合連続決勝打や本塁打と存在感を見せた。

「フライが高く上がるのはスイングが速い証拠」(パ・スカウト)という和田恋(三塁手・高知)。「懐が深く遠くに飛ばせるのは魅力」(パ・スカウト)という園部聡(一塁手・聖光学院)は、近年重宝されるようになった右投げ右打ちの野手。2人は打撃が売り物だ。

小粒といわれた今大会だが、攝津正も井端弘和も甲子園出場時は注目度は低かった。どの選手が驚くべき成長を遂げるのか。夏までの飛躍と新戦力の出場に期待したい。

(週刊FLASH 4月23日号)