国連安保理による核実験への制裁決議を受け、北朝鮮はアメリカ、韓国に対して激しい挑発を繰り返している。ついには、1953年に韓国と交わした朝鮮戦争の休戦協定も一方的に破棄すると宣言。日本から見ると「いつもの瀬戸際外交」に見えるが、実際はかなり緊迫した事態にあるという。

それにしても、北朝鮮はなぜ、ここまで対決姿勢をエスカレートさせるのか。朝鮮総連関係者がこう釈明する。

「60年以上の国連の歴史で、加盟国は2000回の核実験、9000回の衛星ロケット打ち上げをしています。でも、それが国連で問題にされたことは一度もない。なのに、どうして北朝鮮の核実験や衛星打ち上げだけが批判され、制裁の対象となるのか? これは明らかなダブルスタンダードです。衛星打ち上げは宇宙の平和利用だし、核実験はアメリカの核攻撃から自衛するための手段にすぎません。今回の一連の強硬姿勢は、アメリカの対北敵視政策が一線を越えたから。北朝鮮が戦争を望んでいるわけではない。あくまでもわが国の自主権を守るためということを理解してほしいのです」

だが、そんな釈明で国際社会が納得するはずもない。それでなくとも、北朝鮮はこれまで幾度となく、危険な挑発を繰り返してきたのだ。元防衛省情報分析官で軍事アナリストの西村金一氏が指摘する。

「北朝鮮はこれまで(1)強硬姿勢を示し、(2)国連やアメリカに制裁され、(3)さらに激しく強硬に振る舞い、(4)交渉の席上でホコを収め、(5)米韓日などから食糧、資金などの支援を獲得するというパターンを重ねてきました。今回のパターンは1993年のNPT(核拡散防止条約)体制からの脱退宣言以来、3サイクル目になります。おそらく北朝鮮は本気でドンパチを始めるつもりはないと思います」

いわゆる北朝鮮の「おねだり外交」というワケだが、それも3サイクル目ともなると、国際社会も手口をすっかりお見通し。だからこそ、前回よりも挑発のレベルを高めていると見ることもできる。

それに対し、北朝鮮関連の専門ニュースサイト『デイリーNK』の高英起(コウ・ヨンギ)東京支局長が語る。

「北朝鮮の挑発行動はいつものことですが、ただ、今回はちょっと度が過ぎている。合理性が感じられない。先代の金正日氏はこの瀬戸際外交を好んで使いました。わざと挑発して危機を演出し、相手を交渉のテーブルに引っ張り出し、そして敵対行為をやめる代わりに援助をせしめる。その駆け引きぶりは実に巧みでした」

しかし、高氏は「今の指導部にはそんなしたたかさは見えない」と疑問を投げかける。

「指導部は金正恩を筆頭に、皆『ゲーム脳』ならぬ『戦争脳』になってしまったのではと心配しています。健康に悪いと思っても徹夜でゲームに興じてしまうように、これ以上の軍事挑発はまずいとわかっていても自制できなくなっているのではないでしょうか?」

北朝鮮は今回の挑発で「最終決戦」という言い回しを好んで使っている。果たして、この好戦的なセリフは北朝鮮お得意の危険な「おねだり外交」の別表現なのか、それとも「戦争脳」がもたらした本気の戦争願望なのか。

その見極めがつかないのが、今の金正恩体制の危険なところだ。

■週刊プレイボーイ13号「第2次朝鮮戦争に至る“最悪のシナリオ”とは?」より