2006年よりUFCへ参戦し、世界王者に最も近い日本人として期待される岡見勇信選手

写真拡大

 世界で最も過酷なアメリカの総合格闘技イベント「UFC」。このイベントにレギュラー参戦し、日本人として唯一大きく勝ち越している男――それが岡見勇信(ゆうしん)だ。紆余曲折を経て“総合格闘技界のメジャーリーガー”になった岡見の強さに迫る!

――高校時代は柔道をやる傍ら、プロレス志望だったとか?

 はい。最初はオリンピックで金メダルを獲ろうと思っていたけど、すぐ挫折しました(苦笑)。僕は神奈川県のいたって普通の高校に通っていたんですけど、強豪校と比べると練習の量や質が足りなかったように思います。プロレスは、新日本プロレスの入門テストを2度受けたけどダメでした。1度目は永田裕志さんに『目がなっていない』と指摘されたんです。本気度が足りなかったんでしょうね。

――その後、総合格闘技の道を志すわけですが、デビュー当初は勝ち続けてもなかなかチャンスに恵まれませんでした。当時、全盛を誇っていたPRIDEでも1勝しているけど、2戦目の声はかからなかった。悔しくなかったですか?

 いや、僕はけっこう楽観視していたんですよ。有名になりたいという思いより、ただ単純に強くなりたいと思って総合格闘技を続けていたので。

――大事なのはステータスやお金じゃないと?

 そこの価値観はずっとブレていないですね。幸い日本の大舞台に上がれないときでも、ロシアやアメリカで強い選手と対戦することができました。あの経験がなければ、今の僕はなかったでしょうね

――どんな個性であろうと、勝ち続けたらその選手を認める。そういう価値観をアメリカ人は持っていますよね。

 勝利というものに対して、純粋に評価するという姿勢がありますね。最初はブーイングを浴びていても、勝てば次第に声援に変わっていきますから

――だからこそUFCでは1勝の重みがとてつもなく大きい。連敗したらリリース(解雇)される選手も多いですよね。

 そうですね。どこで戦っても1勝は大事だけど、UFCは特にシビア。常に結果が求められる。でも、僕はそこがわかりやすくていいかなととらえています。勝てば自然と上がっていける。競技者からしたら、すごくやりがいがある舞台です。

――ブーイングにはもう慣れました?

 全然気にならなくなりましたね。右から左へ聞き流せる。でも、海外で戦うことが当たり前になっているので、日本大会で声援が飛んだら、逆にやりにくいような気もします(笑)。

――UFCで日本人選手の多くが苦戦しているなか、岡見選手は10勝3敗という好成績(2月20日現在)。当然ファイトマネーは上がった?

 UFCは、勝てばギャラがどんどん上がっていくし、スポンサーもついてくる。選手が戦いやすい環境をつくってくれている組織だと思います。でも、ファイトマネーはドルなので、昨今の円高は痛いですね(苦笑)。

――先日までポートランドにあるチーム・クエストで2ヵ月に及ぶ長期キャンプを張っていました。このチームは実力派チェール・ソネンらが所属する名門中の名門。ここでのキャンプは4回目でしたが、その成果は?

 一度行っただけではわからないことってたくさんある。今回も練習中に『あっ、こういうことだったのか!』と突然気づいたり、勝手に体が動いたことがありました。でも、それができたのは今までの下積みがあったからでしょう。向こうで練習していると、熟練を要する技術など、本当に大事なものはなかなか手に入らないと実感します。

――現地でのコミュニケーションは英語で?

 格闘技のことに関してはある程度理解できる。とにかく片言でも身振りでもいいから、自分のやりたいことを伝えることが重要ですね。最初の頃は僕も遠慮していた部分があったけど、それだったらわざわざアメリカに滞在している意味がない。文法より熱意ですよ(笑)。