「日本人を許します」新年に投げかけられたこの言葉の意味は？
日中国交正常化40周年の年頭にあたって
中国語講座「チンプンカンプン」のドラゴンならちゃんこと楢崎です。
昨年末には二万アクセスなんて驚異的なご愛顧いただけましたこと改めて御礼申し上げます。そんなわけ？で「今年もがんばらなきゃね」なんていくつかネタは用意してたんですが新年第一弾にふさわしいかどうか？？考えながら無為に1月も15日を迎えてしまいました。
しかし天は我を見放さず。冒頭の言葉が「降りてきた」のです。ところで「なんで日本人が中国人から許してもらわなきゃなんねえんだよ？？」こんな疑問をお持ちの方もお持ちの方も多かったと思います。と、いうか、それが日本のジョーシキかとも思うのです。
場所はJR上野駅の構内。1月13日（金曜日）のことでした。僕はある中国の友人と待合せをしていました。この人の名前はビーさん。（あとで写真がでます）
彼女は山東省ウエハイ（威海）出身。技能実習生を送り出す仕事をしながら、一年を東京と山東を往復しながらすごしてもう15年になるそうです。バリバリ筋金入りのクリスチャンで中国でも日本でも日曜日は必ず教会ですごします。
こんなビーさんとこの日はお仕事の打ち合わせをたっぷり2時間こなしたあと「楢崎さん、つかれたでしょ？ご飯にしましょう。」と、お食事雑談タイムに「歳の瀬と新年体験」を語ってくれたのでした。
「私たち東京の華人教会のメンバー五十人は大晦日から元旦二日まで、福島県に行きました。みんなで心合わせて東北の復興を神様にお祈りしたよ。」「神様は私たちに語りました。今年は福島は復興する。日本は大丈夫です」
ビーさんはさらに続けるのです。
「わたしは続けて神様に聴きました。『それで私は日本の復興のためになにをすればいいですか？』そして答えをもらいました」
その、彼女の答えというのが冒頭の言葉。この言葉の意味を紐解くまえにちょっと話は脱線します。僕とビーさんがウエハイに居た時の話です。ホテルで待機する僕をビーさんが迎えに来たときのこと。彼女は僕を見つけると苦笑まじりに話しかけるのでした。
ビーさん 「いまね。タクシーの運転手とケンカしたよ。」
どらごん 「え？なんで？」
ビー 「運転手さんは、私に聞いた。『女の人は、なんで朝ホテル行く?』わたしは日本お客さん迎える言いました。運転手は『おまえは日本人助けるか！！やめろ。愛国中国人はそんなことしない』言った。だからケンカした」
実はこんな「愛国運転手のような中国人」は意外に多い。ダッセンついでに続けると日本人は「抗日時代に」東洋鬼子（トンヤングイズ）とよばれて恐れ忌み嫌われていた。（東から来た鬼）の意味である。一方こんな「東洋鬼子」に協力した中国人は「漢奸」（ハンジャン 「犬」である）と呼ばれて日本人以上に嫌われ蔑まれたらしい。「日本人に協力したな」という言葉はそんな中国人の潜在意識に複雑な影を投げかける。
閑話休題。
もちろん、もう65年も前の日中戦争など直接体験した人などそうそういるわけではない。しかし日本人がそのむかしに犯した行為については中国の友人たちは今でも忘れていないのだ。（日本人は「とっくの昔に水に流した」つもりだが） 「学校で抗日愛国教育が毎日のようにおこなわれているから」とか「TVでも共産党ゲリラが日本軍やっつけるでしょ。これ見るからね」と評論するのはカンタンだ。
政治的には日中両国の戦争被害の補償は、1972年の日中平和友好条約で解決したことになっている。日本政府は中国に対してODAなど「それなりの償い」も継続中だ。
「もういいでしょ？」この手の問題が出てきた時の日本政府と日本国内の世論反応はビミョーである。
でも、思い返して欲しい。中国には、実際「当時の日本人」に家を焼かれた、あるいは家族を傷つけられたり殺された（あるいはそんな体験談を聞かされて育った）人たちが生活しているのだ。（そしてどこだって一緒だけど庶民の暮らしなんてラクじゃないのだ。）
そんな人たちに「北京に日本の援助でなんとかセンターができた」とかいったい何の意味があるんだろう？日本人は「もうとっくに忘れてしまったこと」を中国の人たちは今でも心の底で覚えている。そして、「誰でもいいから、日本人に謝って欲しい」と願っているのではないだろうか？と少なくとも吾輩は感じるのだ。
ビー女史の話は吾輩には「青天の霹靂」。大ショックだった。理由は二つ。
その1 ビー女史のような「親日派」でも「日本人に遺恨を抱いて日本で仕事と生活を送っていたのか？」
その2 そんな彼女が日本人に謝罪をもとめることを率先して放棄してくれたこと。
すみません。ここまで書き進めておきながら読者各位を途中で「置き去りにして」しまったかもしれません。
ここらで結論を急ぎましょう。僕は中国語講座「チンプンカンプン」を通じて受講者のみなさんに「中国語を通じて公私にわたる中国人の親友を作ってほしい」とお願いしています。そしてその友人に「君の家族に日本人が働いた蛮行を許して欲しいんだ」と「あなたの言葉で語ってほしい」ともお願いしています。（そんな話を聞いた覚えのない人は「これから」ですので覚悟しててね）
このあなたの言葉をきいたその中国の友人はきっと「ええ？」って戸惑いの表情をうかべるでしょう。けれどもあなたのことをきっと今までと違った視線で受け止めてくれるはず。
なんだか「ガラにもない」上から目線のお説教ぽいお話になってしまいましたね。新年早々のことでお許しくださいませ。_(_^_)_
次回からはいつものゲテモノ・下ネタ路線の復活です（汗 どうぞよろしく。（執筆者：楢崎宣夫 提供：中国ビジネスヘッドライン）
