ピッチをワイドに使っている四中工

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あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

7日に、ふらっと国立競技場をのぞきに行った。高校サッカー準決勝。目に眩しく映ったのは第2試合。四中工、四日市中央工業のサッカーだ。
 
率直に言って、高校サッカー、全国高校サッカー選手権大会は、旧態依然とした非サッカー的な大会だと僕は思っている。すでに使命は終わった。強化の基本に立ち返った、新しいやり方を模索すべきだと。なので、最近は一歩引いた視線で、遠くから眺めるスタンスでいる。過度の期待を寄せることなく。それだけに、四中工のサッカーには、思わぬ拾い物をしたような、驚きを感じた。ふらっと出かけただけに、より感激させられた。

胸の透くような爽快感溢れるサッカー。一言でいえばそうなる。とても快適な気分に誘われた。理由は簡単だ。ピッチをワイドに使っていたから(写真参照)。ピッチの四隅にボールがスムーズに回っていたから、だ。

僕がこれまで見た試合は、どれも展開力に乏しい、押しくらまんじゅうをしているようなサッカーだった。あるいは、技術とスピードのバランスが悪いサッカーだった。

日本のサッカーの印象を訊ねたとき、開口一番「速い」と言ったのは、スペインのジャーナリストだが、瞬間、僕はその真意がよく分からなかった。よく聞けば、技術がスピードに追いついていないという意味であることが判明したが、高校サッカーには特にその傾向が強いと思う。

全員が大焦りで、慌ただしくサッカーをしている感じなのだ。悪く言えば品がない。よく言えばスポーツ的。技術は右肩上がりに進歩しているとはいえ、まだまだその傾向は強い。抑揚のない、変にスピーディーなサッカーが、まだまだ多数を占めている。

観戦しているとつい息苦しくなる。部活動で鍛えた身体を持った人にしかできない競技に見える。サッカーをある程度真剣にやっている人は、それでもスムーズに入っていけるが、そうではない人にとっては、大変な競技にしか見えない。素人が感情を移入しにくい競技になっている。

かつてはともかく、いまこの時代に、高校サッカーの観戦をきっかけに、サッカー好きになる人はどれほどいるだろうか。郷土愛は芽生えても、サッカーファンになるには至らないと思う。

だが、四中工のサッカーは、そうではなかった。よりサッカーが好きになった気がしたのは、僕だけではないはずだ。日本のサッカー界の普及発展に貢献するサッカー。褒めすぎを承知で言えばそうなる。

布陣は4―1―3―2に見えた。しかし3の両サイドが高い位置で、まさにウイング然と構えていたので、フォワードが4人いるようにも見えた。4―1―3―2という布陣は世の中にけっして多くない。それを維持することが難しいからだ。前に人が多いからに他ならない。中盤ダイヤモンド型の4―4―2、相手が強ければ、両サイドが守備的MFの位置まで下がる4―3―2―1になりかねないが、四中工はその流れに反し、むしろ4―1―1―4に見えるサッカーをした。展開力に富んだサッカーで、両ウイングを上手く活かしていた。

さらに、ウイングにボールが渡れば、サイドバックがまさに香車の如く、その後を猛追したので、サイド攻撃はより分厚いものになった。すなわち、横への広がりと縦へのスピードのバランスが良かった。爽快な気分にさせられた理由だ。その点では、日本代表のサッカーよりも上回っていた。密集地帯に慌ただしく突き進んでいくサッカーにはない魅力だ。

決勝戦はどうなるのか。唯一気になるのはバックラインが深いことだ。4―1―1―4というべき4―1―3―2は、縦長になる傾向がある。相手ボールになったとき、守備的MFの両サイドがぽっかり空くことしばしばだ。あと10m、最終ラインが高い位置を維持することができれば、鬼に金棒なのだけれど、現状では、少なくとも完封は難しいと思う。さて結末はいかに。