6月7日、6万5856人の観衆を集めて開催されたキリンカップ最終戦、日本vsチェコは両者無得点の引き分けに終わった。この結果、日本、チェコ、ペルーはともに2引き分けで並んで3者優勝となった。

日本はペルー戦に引き続き3-4-3の布陣を敷いた。トレーニングを積んだことに加え、スターティングメンバーをアジアカップで一緒にプレーして相互理解を深めている選手たちにしたことで、プレーは改善されたが、ゴールを生むことはできなかった。

試合開始早々から日本がボールを支配する。15分までのボール支配率は日本が64.1%を握り、その後も前半は60%を下回ることはなかった。また、守備は練習どおりに相手をサイドに誘い込み、数的優位を作ってボールを奪い続けた。

ところが攻撃がうまく組みたてられない。自陣や中盤のパス交換の際にポジショニングやタイミングがずれ、自らボールを失ってしまう。また、練習では両サイドのDFが縦にパスを出す起点になっていたのだが、この日は単調に近くの味方選手を選ぶ場面が多く、楔を打ち込むことが少なかった。さらにチェコの守備は早くブロックを作って乱れないため、狙っていた素早い攻撃も、ペナルティエリア前の斜めのパスも不発に終わった。

後半に入ると本田が敢えてバランスを崩しながら相手を混乱させようとする。そのチャレンジが同じ位置に選手が重なってしまう悪影響ももたらしたが、同時に試合を活性化させることにもなった。

52分、前半は右サイドからボランチの位置までを主な活動範囲としていた本田が左サイドをドリブルで駆け上がりクロスを上げる。チェコのDFラインは混乱し、右サイドの岡崎の折り返しに反応した吉田はノーマークとなった。たが、慌てた吉田のヘディングシュートはクロスバーを越えていってしまった。

77分、この試合の一番の見せ場がやってくる。本田が左サイドに回り込みファーサイドへクロスを送った。タイミングよく走り込んだ岡崎のヘディングはGKチェフが弾く。だがそこには李が詰めていた。李は素早く反応して左足で押し込もうとした。ついにゴールか――というそのとき、チェフの左手がボールの進路を遮った。「手が出てきたと言うより、普通にそこに手があった」(李)というチェフのファインプレーが、試合を膠着させたままにした。

結局、両チームともその場面以上の決定機は作れなかった。日本は後半も62.5%のボール支配率を誇りながらネットを揺らすことはできなかったし、チェコは枠内に飛んだシュートがわずかに1本だけだった。チェコの出来からは、日本の3-4-3は守備において破綻が少なかったとも言えるだろう。

もっとも、3-4-3については2つのポイントがはっきり示された。一つは「より高い位置でボールを奪える」(今野)ので攻撃に移りやすいはずのシステムで無得点で終わってしまったこと。ペルー戦から改善されているものの、本来の意図は生かされていないと言えるだろう。

そしてもう一つ、日本は3バックのオプションを必ず持たなければならないことも見えてきた。相手の2トップがともにヘディングを得意とする場合、4バックだとCB2人がそれぞれ対応しなければならないため、カバーが難しくなる。だがこの日の3バックだと、伊野波と吉田がそれぞれマークし、今野がこぼれてくるボールを押さえることができるのだ。安全度は増すはずなのである。

ハーフタイムにザッケローニ監督は「3-4-3は公式戦2試合目としては信じられないくらい非常にうまくいっている」と評価したという。だが2試合連続で得点が生まれなかったことを考えると、3-4-3の成熟にはもう少し時間がかかりそうだ。それでも日本が放棄してしまえるシステムではない。となると、今しばらくはこの試合のように、攻撃の際はため息が出てしまうことになるのかもしれない。


レポート/森雅史