■ 第8節

火曜日にソウルで行われた日本代表の韓国戦から中2日。ボルシア・ドルトムントのMF香川真司がブンデスリーガの第8節の1FCケルン戦に先発出場。ドイツ代表として国際Aマッチで43ゴールをマークしているFWポドルスキと初対決となった。

ドルトムントは7節のバイエルン・ミュンヘン戦で2対0の勝利を飾ってリーグ戦は6連勝中。18得点5失点と勢いは止まりそうにない。対するケルンは1勝4敗2分け。7得点13失点で勝ち点「5」の16位と苦しいスタートとなっている。

アウェーに乗り込んだドルトムントは<4-2-3-1>。GKヴァイデンフェラー。DFピズチェク、スボティッチ、フメルス、シュメルツァー。MFベンダー、サヒン、ブラスチコフスキ、香川真司、グロスクロイツ。FWバリオス。DFオヴォモイェラは欠場。MFゲッツェがベンチ入り。先日のトルコ戦、カザフスタン戦のドイツ代表に選ばれたMFグロスクロイツが左サイドで先発出場。

■ サヒンの決勝ゴール

序盤はホームのケルンが攻め込む。前半9分にはロングボールを処理したFWポドルスキが右足でミドルシュートを狙うがクロスバー直撃。こぼれ球を狙ったシュートもGKヴァイデンフェラーがセーブし、先制ならず。

好調のドルトムントも反撃開始。いくつかチャンスを逃した後、前半20分に左サイドの奥でMF香川がボールを持つと、相手DFと1対1になると、切り替えしてマークを外すと右足でクロス。このクロスがファーサイドのFWバリオスにピタリと合ってFWバリオスがヘディングシュート。これは惜しくもポスト直撃となるが、跳ね返りをMFブラスチコフスキが押し込んでドルトムントが先制する。MFブラスチコフスキは今シーズン初ゴール。前半は1対0のドルトムントリードで終了する。

追いつきたいケルンは後半もドイツ代表のFWポドルスキを中心にチャンスを作る。過密日程のドルトムントは後半27分にMF香川に代えてMFゲッツェ、後半31分にFWバリオスに代えてFWレワンドフスキを投入。逃げ切りを図ったが、後半37分にケルンはロングボールのこぼれ球からFWポドルスキが得意の左足で強烈なミドルシュートを叩き込んで1対1の同点に追いつく。FWポドルスキは今シーズン3ゴール目。

しかし、ドルトムントはロスタイムに決勝ゴールを挙げる。途中出場のFWレワンドフスキが中央でキープし、右サイドのMFゲッツェにスルーパス。MFゲッツェのダイレクトパスをゴール前に入っていたMFサヒンが執念で押し込んでドルトムントが勝ち越しに成功する。MFサヒンは3ゴール目。結局、2対1でドルトムントが劇的な勝利を飾った。

■ ドルトムントは7連勝

これでドルトムントは7連勝で通算7勝1敗。首位のマインツが開幕から7連勝と突っ走っているので7節終了時点での順位は2位であるが、敗れたのは開幕戦のレバークーゼン戦のみ。アウェーでは4戦全勝と破竹の快進撃を見せている。

この日は1点リードを奪った後半にMF香川とFWルーカスをベンチに下げて逃げ切りを図ったが、後半37分にドイツ代表のFWポドルスキにゴールを決められて追いつかれるという嫌な展開になったが、FWバリオスに代わって出場したFWレワンドフスキが起点になって、MF香川に代わって投入されたMFゲッツェがアシストを記録し、勝ち越しに成功した。

怪我で離脱のDFオヴォモイェラとMFケールのポジションを除くと、ほとんどレギュラーが固定されているドルトムントであるが、控えにも優秀な選手がそろっている。MF香川も気を抜くとポジションを奪われかねない状況である。こういった環境はMF香川自身の成長を促すことだろう。

■ 先制ゴールを演出

過密日程にもかかわらず先発出場したMF香川は左サイドからの完璧なクロスで先制ゴールをおぜん立て。FWバリオスが決めていればアシストが記録されたが、FWバリオスのシュートはポストに当たったため、記録上はアシストはつかないが、パーフェクトなクロスだった。

この日はこのシーン以外でもクロスの質が高く、サイドからのクロスボールが有効だった。特に、前半はケルンのマークがそれほど厳しくなくてフリーでボールを持つシーンが多かったため、何度もチャンスに絡んだ。後半になると、チーム全体が雑になってきて、なかなかMF香川にボールが入らなくなったが、トータルで見ると質の高いプレーでチームの勝利に大きくに貢献したといえる。

シーズン前にクロップ監督が「クロスの質が今一つなのでサイドではトップ下で起用している。」というニュアンスの発言をしたことで、「MF香川はクロス上手くない。」というイメージが付いてしまっているが、問題視されるほどクロスが下手なわけではない。どちらかというと、C大阪ではトップ下でプレーすることは全くなくて、サイドでプレーすることがほとんどだったこともあって、「左サイドから仕掛けてクロスを上げる」というのは得意のプレーの1つである。

■ 過密日程 

気になるのは過密日程。代表戦も2試合に出場し、中2日でブンデスリーガの試合。次週もヨーロッパリーグが行われるので、また週に2試合の日程が組まれている。クロップ監督が楽な展開になると早めに交代させてくれるので、ほかの選手と比べると疲労度は少ないかもしれないが、「キレが命」の選手なので、ここまで試合が続くとコンディションを崩さないか、と心配になってくるし、怪我の危険性も高まる。

代表戦、リーグ戦、カップ戦とヨーロッパで戦っていくにはタフな日程も乗り越えていかなければならないが、1年目から想像以上にタフな戦いを強いられている。過密日程はJ2で経験済みとはいえ、超多忙なスケジュールは気になるところである。

■ ロンドン五輪代表として①

岡田ジャパンでは20番目から30番目くらいの位置付けであり、常時、代表に招集されていたわけではないが、新体制になって4試合連続スタメンとレギュラーポジションをつかんでいる。今後はさらに、関塚ジャパンの一員としてU-21代表でもプレーする機会が出てきそうである。ザックジャパンでは主力の一人とポジションであるが、関塚ジャパンでは主力中の主力であり、21歳以下の代表チームのなかでは、経験と実績は図抜けている。

2009年、2011年のワールドユース出場を逃した代表にとって、ロンドン五輪の出場を逃すことは絶対に避けなければならないところである。U-17やU-20やU-23の世界大会に出場できなかった選手でフル代表まで登りつめた選手は少なくはないが、このような1つや2つの事例が「世界大会の経験は必要ない。」ということの証明にはならない。

たとえば、今回、U-19代表が世界大会を逃したが、痛いのは来年の世界大会に出場できないことよりも、この敗退でチームは解散になってしまうので、本大会までに合宿や試合を通して得られるはずの経験がゼロに近くなってしまうことであり、この世代の選手の目標の1つがなくなってしまうことによるモチベーションの低下である。U-19世代の場合、プロになって試合に出場できないことが多いが、代表の活動がモチベーションになっている選手は少なくなかった。

■ ロンドン五輪代表として②

ということで、是が非でもロンドン五輪の切符は獲得しなければならないが、ただ、この世代の代表チームにMF香川を招集する必要はないのではないだろうか?フル代表のレギュラーに定着していて、「卒業扱い」とした方が、本人にとっても、チームにとっても望ましいのではないだろうか?と考える。

確かにMF香川が入るとチーム力はアップするだろうが、A代表の活動やドルトムントの活動とバッティングすると、府五輪代表が最優先とはいかなくなる。いるか、いないか、分からない選手を中心にして戦うことは、チーム作りを考えてもマイナスに働く可能性がある。かつて、MF前園真聖、MF中田英寿が同じような問題に直面したが、彼らと同じケースである。


ボルシア・ドルトムント (採点)

GK ヴァイデンフェラー 7.0 
 → 後半はピンチが続いたがファインセーブ連発で防いだ。
DF ピズチェク 5.5 
 → 攻守ともに悪くはないがこれといった武器もない。 
DF スボティッチ 5.5 
 → 危ういパスミスもあった。
DF フメルス 6.0 
 → 攻め上がったときはチャンスにつながる。
DF シュメルツァー 5.5 
 → クロスの精度をもう少し高めたい。
MF ベンダー 6.0 
 → テクニックはないが体を張ったプレーで攻守に貢献。
MF サヒン 7.0 
 → ボールタッチは少なめだったが、ロスタイムに大仕事。
MF ブラスチコフスキ 5.5 
 → 先制ゴールをマークしたが、ドリブルが効果的でなかった。
MF 香川真司 6.0 
 → パーフェクトクロスで先制ゴールをおぜん立て。後半はやや消えた。 
MF グロスクロイツ 5.0 
 → 体調不良の影響か、いつものプレーは見せられず。
FW バリオス 5.5 
 → シュートチャンスに絡んでいるがフィニッシュの精度を欠いた。

MF ゲッツェ 6.0 
 → 後半27分から出場。乗りきれなかったが最後に決勝アシスト。
FW レワンドフスキ 6.0
 → 後半31分から出場。決勝ゴールの起点となった。





香川真司 (かがわ・しんじ)

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