もし10年前にザッケローニのような監督を招聘できていれば…かなり遠回りした気がする<br>(Photo by Tsutomu KISHIMOTO)

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日本対アルゼンチン戦の翌日、ソウルにやってきた。

東京とは比較にならない活気だ。元気が街に漲っている。圧倒されずにはいられない。サッカーの強い弱いと、経済の状況とは比例するという常識を日本代表は覆すことができるか。

「アルゼンチン戦より韓国戦の方が厳しい戦いになる」とのザッケローニの見解は正しいと思う。とはいえ韓国戦、勝敗はともかく、撃ち合いは期待できる。少なくとも試合は面白くなると僕は見る。アルゼンチン戦同様、見逃しは禁物だと言いたいが、その前にアルゼンチン戦の採点をしておかなければならない。

GK川島 7 スーパーセーブのみならず、試合を通して冷静な判断と的確なポジショニングが光った。

DF 内田 6 調子は上向いてきたが、もっとボールに絡みたい。
DF 栗原 6.5 代表定着に大きく前進。後半、連続攻撃を仕掛けられたときも、慌てる素振りは見せなかった。
DF 今野 7 ディフェンスのリーダーとして統率力が光った。その良い意味での腰の重さ、しぶとさが光った。
DF 長友 6.5 7と言いたいところだが、フィードに好ましくないミスがあったことは事実。中距離パスの能力をもう少し高めたい。

MF 遠藤 5.5 ベストコンディションとは言えず。最低限の仕事はしたが、本来の冴えは感じられなかった。
MF 長谷部 6.5 決勝ゴールに繋がるミドルシュートを放ったが、もっと存在感を発揮できるはず。不動のレギュラーなのだから、もう一息上のプレイを望みたい。
MF 本田 6.5 技術の高さ、ボールの操作術、身体の使い方でアルゼンチンのスターと互角以上に渡り合った。アルゼンチン側でプレイしても十分行けそうな感じがした。

FW 岡崎 6.5 右サイドでのプレイにだいぶ慣れてきた。これまでで一番安心してみていられた。日本のカイトになれるか?
FW 森本 6 試合に出る喜び、モチベーションの高さを感じた。得点こそ決めることはできなかったが、これまでで一番良い出来。
FW 香川 6 キレ、俊敏性、スピード。これまでの日本人選手の中では群を抜いているが、見せ場を頻繁に作ったわけでもなかった。後半尻すぼみに終わったのは残念。

※ 交替選手
FW 前田 6.5 10の力が6か7程度しか出せなかったこれまでと違い、久々にノリの良いプレイを見せた。前田に限らず、大抵の選手が気持ちよさそうにプレイしたことが、アルゼンチンを苦しめた大きな理由だ。
MF 阿部 6.5 アルゼンチンの攻撃が加速する中で、出場したが、計算できる選手として存在感を発揮。何も問題はなかった。
MF 関口 5.5 活きの良さは見せつけたが、いかんせんプレイ機会が少なかった。今後に期待したい選手。
MF 中村 6.5 ゴールに繋がりそうなプレイをチラッと見せた。シュートに持っていくパターンを確立しつつあるように見える。もう一伸びしそうなムード。
GK 西川 採点不能

※監督 ザッケローニ 7 
昨年9月、オランダに0−3で敗れた岡田サンは「プレスが90分持たなかった」。「90分持たせないと難しい」と述べたが、今回は最後まで十分持った。理由はなぜ。

僕は、コンディションというよく分からないものに、原因を求めることが好きではない。オランダ戦は日本がアウェーで、今回はアルゼンチンがアウェーだった。コンディション的に不利な立場に置かれているのは、当時の日本であり、今回のアルゼンチンだ。それはそうなのだけれど、目に映ったものではない。推し量ったものである。推測ではなく、実際に目に映ったものを述べることが筋だと思う。ピッチをスタンドの上階から俯瞰で眺めた際に映ったものに勝るものはない。

岡田ジャパンとの最大の違いは、ポジションワークに敏感なことだ。布陣は各自のカバーするエリアを特定したものという概念が、ピッチにしっかり反映されていた。よってプレスは、これまでより遙かに効率的に掛かった。良いボールの奪い方をすることに何度となく成功した。逆に言えば、アルゼンチンは悪いボールの奪われ方を何度もし、ペースに乗ることができなかった。

世界のスタンダードが、日本に到達した。本当に遅まきながら。日本が無駄に費やした時間、失った時間の長さを思わずにはいられない。もし10年前、ザッケローニのようなタイプが日本に来ていれば。かねてから問題あり! と言い続けていた僕は、長いトンネルを抜けた喜びだけに浸っているわけではない。
 ようやくスタート位置に就いた。これが正直な感想。本当の勝負はこれからだ。

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