リーグ・アンでサポーターによる人種差別問題が再燃している。昨年2月にモロッコ人DFのウワドゥ(ヴァランシエンヌ)が対戦相手メッスのサポーターから人種差別的な野次を受け、抗議のためにハーフタイムに観客席に駆け上がるという事件が起こり、スタジアムでの人種差別問題が一挙に注目を集めてからちょうど1年。今回は15日のリーグ・アン第24節リヨン対ル・アーブル戦で、リヨンのガーナ人DF、ジョン・メンサーが被害にあった。

 レキップ紙によると、メンサーは試合開始からボールをもつたびに、21歳の観客にサルの鳴きまねを浴びせられるなど執拗ないやがらせを受けていた。ショックを受けたメンサーはハーフタイムにロッカールームで交代を申し出たが、ピュエル監督はプレーをつづけるよう説得。しかしメンサーは後半、心ここにあらずの状態で2度の警告を受け、70分に退場処分となった。なお男は警察により身柄を拘束されている。

 メンサーは今シーズン前にレンヌからリヨンに移籍したが、これまで期待通りの活躍ができずにいる。原因のひとつには、メンサーが新しい環境にうまく溶け込めないことがあるようだ。昨年9月には、道路の検問を受けた際に警察官ともめ、数時間にわたり留置されるという事件もあった。背景にはフランス語能力の問題もあったとされる。

 メンサーはレキップ紙に「警察とのことは忘れていないし、これからも忘れない。しかし今回のことは事情が異なる。自分の仕事場であるピッチで起こった。彼(容疑者)がなぜあんなことをしたのか理解できない。彼は私の仕事を汚した。事件が起こって、私が考えることはただひとつ。ガーナに帰ってすべてを忘れることだ」とショックの大きさを打ち明けている。

 現在クラブ関係者がメンサーに帰国を思いとどまるよう説得を続けているが、「(今後については)答えたくない。リヨンは今回起こったことについて、責任ある行動をとったとは言えない」とクラブに対する不信感も表しており、波紋は広がりそうだ。