富裕層関連のビジネスサイトが数多く登場している

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   戦後最長の景気拡大が続く中で、富裕層と言われる人たちが年々増え続けている。そうしたスーパーリッチを狙い、証券、銀行、不動産会社などが入り乱れた争奪戦が始まった。

   米証券大手メリルリンチなどは2007年6月末、世界の富裕層に関する06年の調査結果を発表した。国内では、100万ドル(約1億2,000万円)以上の金融資産(不動産を除く)を持つ「富裕層」は、05年に比べ5.1%(7万人弱)増え、147万7,000人になった。対前年比をみると、03年は5.8%増、04年2.4%増、05年4.7%増と年々増加を続けている。日本の人口は1億2,800万人。1%以上が「100万ドルの男女」という訳だ。

「金融資産1億円以上の個人富裕層」を対象に営業活動

   06年5月に合弁会社として新たに発足、営業を始めた三菱UFJメリルリンチPB証券は、PB(プライベート・バンキング)と銘打ち、当初から「金融資産1億円以上の個人富裕層」を対象に活動を展開している。広報部によると「初年度から営業利益、当期利益など順調に推移している」とし、2年目以降も成長路線が続くと見ている。会社としての競争に打ち勝つ営業努力も当然必要だが、市場規模が全体として「大きくなっていく」と見込んでいる。

   また大手都市銀行では、みずほ銀行が「ヒルズ族」を狙い、東京の六本木ヒルズへ出店し、ラウンジや個室を設けている。資産運用など一部の相談業務に特化し、通常の振込みや税金支払い業務は窓口では扱っていない。また新生銀行は、06年はじめに開業した新名所、東京の表参道ヒルズにカフェと一体化させた店舗を出店し、ゆったりとした雰囲気を売りに富裕層の取り込みを目指している。大阪市内でも、高額預金者限定の会員制オフィスを設ける銀行があるなど各地に広がりを見せている。

   不動産関係でも、「セレブ感」が漂う地域の中古マンションなどの優良物件を対象とした富裕層のコンサルティングを狙った動きが強まっている。三井不動産販売が、07年春に開業したばかりの東京・六本木の東京ミッドタウンに「リアルプランサロン」を開業したり、住友不動産販売が07年3月に銀座に初めて拠点を構えたりしている。

   雑誌の世界でも、次々セレブ雑誌が創刊されている。「古株」の「セブンヒルズ」(イー・マーケティング)のほか、06年創刊の「ラピタプレミアム」(小学館)、「シュプールリュクス」(集英社)などに続き、07年3月には「zino(ジーノ)」(KI&Company)が創刊された。雑誌「LEON」の創刊編集長を務めるなどした岸田一郎さんが立ち上げた「脱・『ただのお金持ち』!」をうたう月刊誌だ。ウェブマガジン「@zino」とネットとも連動し、時計などのこだわりの小物だけでなく、高級車や高級住宅情報なども伝える。

1,500万のレクサス 「まあ買っとくか」と購入

   トヨタの高級車ブランド「レクサス」も国内で05年に大きな話題になり、以降も好調を続けている。一流シェフを派遣したりプライベート・ジェット機のチャーター仲介などを手がけたりする「クラブ・コンシェルジュ」(東京)は、03年から「金融資産3億円以上の方を中心」とする会員制サービスを手がける。広報担当者によると、現在の会員は5,500人強。こんなエピソードもあるそうだ。06年秋の設立3周年記念パーティーを六本木ヒルズで開いた際、イベントの一環で1,500万円前後のレクサスの予約販売の希望受付を始めたところ、用意していた4台があっさり「売れてしまった」という。車目当てで来た訳ではないのに「まあ買っとくか」、とポンと金を出す人がいるという訳だ。「(資産を)ただ持っている人ではなく、持っていて使う人」の市場規模は益々広がるとみている。今後、会員数を2〜3万人に増やすことを目指している。

   「金融資産100万ドル以上」とまではいかないにせよ、今後は団塊世代への退職金や遺産相続が見込まれる人も少なくないとみられ、余裕がある「富裕層」を対象としたビジネス展開には拍車がかかりそうだ。