米高官「原爆正当化発言」 ブロガーからもブーイング
久間前防衛相が米軍による原爆投下を「しょうがない」と発言し、辞任に追い込まれた問題で、今度は米国側から、原爆を正当化する発言が飛び出した。日本政府側は静観する構えだが、ブロガーなどからは「米国に抗議をしないのはおかしい」といった声が多く出ている。
日本政府側の反応はきわめて冷淡
問題となっているのは、ロバート・ジョセフ核不拡散担当特使(前国務次官)が7月3日、米国とロシアの核エネルギー利用と核軍縮における協力についての共同記者会見で述べた言葉だ。「原爆投下で20万人が死亡した。技術の非常に無責任な利用だったと思う」と問われ、
「原爆の使用は、連合国側の数十万の生命だけでなく、文字通り何百万もの日本人の命がさらに犠牲になるかもしれなかった戦争に終わりをもたらしたということに、ほとんどの歴史家は同意すると思う」
と述べた。久間前防衛相の発言問題と直接の関連がある訳ではないが、従来の米国の原爆投下についてのスタンスが改めて示された形で、日本国内に波紋を広げた。
7月4日には、被爆地からの反発の声が相次いだ。田上富久・長崎市長は「繰り返し、こうした発言が出るのは非常に残念」と述べ、秋葉忠利・広島市長も「(米国側の見解は)歴史学者の定説とは大きく違っており、米国の政府首脳も広島、長崎のことについてもっと深く理解すべき」などと反発した。
一方の政府側の反応はきわめて冷淡で、塩崎恭久官房長官は7月5日夜の会見で
「発言は個人的な考えと聞いている」
「抗議をするより、核兵器が二度と使用されることがないよう核廃絶への取り組みを強めることが大事」
などと、特にアクションは取らないことを明らかにした。こんな状況に対して、著名ブロガーからは批判的な声が相次いでいる。
「国会は『原爆投下非難決議』を出せ」
J-CASTニュースでもたびたび紹介している池田信夫さんのブログでは、久間発言を受けて7月3日の段階で「国会は『原爆投下非難決議』を出せ」という記事を掲載していたが、米高官の発言を受けて追記された。追記部分では、「原爆よりも、ソ連参戦が決定的な降伏のきっかけになった」とした上で、
「こんな嘘をいまだに公言している米政府に、安倍政権は何もいわないのだろうか」
と、米側の見解は「嘘」と断じ、特にアクションを取ろうとしない安倍政権への疑問を投げかけている。
政権批判を連日繰り広げる有名ブログ「きっこのブログ」は、もっと辛辣で、同日付で
「あたしは、ハッキリと言わせてもらいますが、この国に原爆を落とした側が、大ウソをついて、これほどの大量虐殺を正当化するような発言をした時に、すぐに対応して謝罪と発言撤回の要求もできないような総理大臣など、この国のリーダーとしての資格があるとは思えません」
と批判している。
ブログエントリーを解析するサイト「kizasi.jp」によると、「原爆」というキーワードについて語ったブログの数は、6月26日から7月2日にかけて1,182件だったが(「しょうがない発言」が行われたのは6月30日)、「原爆正当化」発言以降の7月3日から7月9日にかけては、2,076件の言及があり、注目度は高まっていることが伺える。
今回の「正当化発言」について言及しているブログの内容はというと、
「鬼畜発言」
「やっぱりアベ政権はジョセフ発言を許すのか」
「塩崎をクビにしろ」
などと、米国側にも日本側に矛先を向けている例が多く、両政府を擁護する意見は皆無に近い。