「従軍慰安婦」問題 「20世紀最大の人権蹂躙」なのか
旧日本軍によるいわゆる従軍慰安婦問題で、米下院は日本政府に謝罪を求める「慰安婦決議案」を可決した。決議案(当初)には、旧日本軍の「集団レイプ」「堕胎」とその強制性などが盛り込まれていたほか、この問題を「20世紀における最大の人権蹂躙の一つ」と決め付けるなど、刺激的な内容になっている。
集団レイプ、堕胎の強制、屈辱、性的暴行?
米下院外交委員会は2007年6月26日(日本時間27日未明)、旧日本軍によるいわゆる従軍慰安婦問題で日本政府に責任を認めて謝罪するよう求める決議案を、一部修正し39対2の賛成多数で可決した。
この決議案は日系米国人のマイク・ホンダ下院議員によって07年1月31日に提出。その内容は次のようなものだ(要約)。
日本政府は、第2次大戦中に日本軍が若い女性を強制的に性的奴隷にした、いわゆる「慰安婦」について明確に謝罪し、歴史的責任を負うべきである。「慰安婦」制度の残虐性とその規模は前例がなく、集団レイプ、堕胎の強制、屈辱、性的暴行によって、心身の障害や死や自殺にまで追い込む、20世紀における最大の人権蹂躙の一つである。日本の新しい教科書のなかにはこれを軽視するものまであり、日本の官民は最近「河野談話」を弱め、撤回する希望を表明している。(1)日本政府は、日本国首相による公式声明のかたちで謝罪し、(2)旧日本政府による「慰安婦」の性的奴隷化や売買の事実がなかったという主張に明確に反論し、(3)現在から将来の世代にわたってこのおぞましい犯罪について教育すべきである。
この「慰安婦決議案」をめぐっては、日本国内でも波紋を呼び、自民・民主党の国会議員の一部や有識者がワシントン・ポスト紙に「真実(The Facts)」と題した全面広告を出した。
「強制的に拉致したことを示す文書は1つとしてない」
「当時の政府や軍指導部からの戦時命令のなかで、女性を強制的に拉致し『慰安婦』として働かせたことを示す文書は1つとしてない。逆に、女性をその意思に反して強制的に働かせることがないように民間業者に警告する文書が多数発見されている」
としたほか、この決議案などは慰安婦の証言を基にしているが、「反日キャンペーン」後に証言が急変したことなどを挙げ、
「事実に基づかない誹謗中傷について謝罪すれば、米国の大衆に歴史の真実性について謝った印象をあたえるだけでなく、米国と日本の友好関係に否定的な影響を及ぼす」
などと述べ、「事実を客観的に捉えてほしい」と主張した。
一方この決議案の審議では、全面広告についても反発の声が相次いでおり、この決議案の可決後もロイター通信が、ラントス外交委員長が「犠牲者への冒涜ゲーム」「非常に目障り」と批判したと報じている。
一方、2007年6月27日付のAP通信は、ラントス委員長が「日本は歴史的記憶喪失」と指摘したことを伝えたうえ、安倍首相が07年4月に訪米した際も含めて「第2次大戦中に旧日本軍が女性を売春宿で働かせることを強制したことを繰り返し謝罪した」、「こうした謝罪にも拘わらず、日本は十分に責任を取っていなかった」などと報じており、今回の可決を「正しい方向への第一歩」と捉えているようだ。
一方、国内のネット上では、「他国が政治の場で白黒をつけるものではない」「やってもいない事を何故謝らないとならない?」といった疑問の声がブログや掲示板などで上がっており、一部では「もう日本が滅びるまで土下座し続けるしかないよ」といった諦めの声まで上がっている。