福岡市教育委員会で「学校保護者相談室」を説明するサイト

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   「理不尽」な要求を学校にする無茶な親が増えている。法的な問題に巻き込まれないよう、小中学校や幼稚園が地区の弁護士と相談して援助してもらう制度を東京都港区が2007年6月1日から始めた。すぐに「訴えてやる」と声高に言い放つ親たちの要求とは、どんな無茶ぶりなのか。

   同区教育委員会によると、区内を5地区に分け、それぞれ1人の弁護士が担当する。学校側が同委に要請し、委員会が調整した上で学校が弁護士と直接相談する。11日現在で相談はまだない。同区内で特別に苦情が多い訳ではなく、直接裁判に発展した例もないが、全国的に「学校を訴える」とどなり込む親たちが増える傾向にあり「先手を打った予防策」という。生徒の親だけを対象としている訳ではないとも強調し、地域住民や暴力団関係者からの要求も多いとしている。相談件数の予想は難しいが「月15件前後では」とみている。

「子供の親権どちらにあるのか校長が判定しろ」

   東京都内の校長らに学校に対する要求の中身を聞いた。小学校に対し、子供の親がけがの治療費を請求してきた。子供同士が学校外で遊んでいてけんかになり、片方の子供がけがをした。最初は子供の親同士が話し合いをしたらしいが、折り合いがつかず、どういう訳か学校に対して「管理責任がある」と治療費の支払いを求めてきた。損害賠償を請求する裁判を起こすという発言も出た。

   また、離婚した元夫婦が学校を訪れ、子供の親権はどちらにあるのか校長に判定しろ、と迫ったケースもある。父親の方は弁護士を連れてきて専門的な話を次々繰り出し、母親は大声を出して「大変な事態になった」。校長は「裁判所でやってほしい」と思いながら対応に追われたが、「学校が何とかしろ」と言われ続けた。

   別のケースでは、使用禁止の約束を守らなかったので教師が子供の携帯電話を取り上げると、「基本料金を日割りで取り上げた日数分払え」と要求してきた親もいた。

   法律は関係なさそうだが、次のような要求も実際にあった。

――子供を起こして学校へ連れて行ってほしい。
――子供は熱があってきつそうだけど、自分は忙しいので子供を学校へ行かすから何とかしてほしい。
――卒業アルバムに自分の子供があまり写ってないので作り直せ。

謝っただけでは許してくれず、すぐ「訴える」という

   多くの場合話は長期化し、親側が「訴えてやる」と迫ることも珍しくなく、教師たちに心理的圧迫を与えている。裁判に至らないまでも感情的しこりが残る場合も少なくない。ある教育委員会関係者によると、以前は学校の先生にもし非があれば、謝れば済んだ。それが、謝っただけでは済まなくなり、すぐに親たちが「訴える」と主張するようになった。最近では、そもそもなんで学校や教師に関係があるのか、という事例でどなりこんでくる人も増えた。

   福岡市教育委員会は、05年から親たちと学校のトラブルを仲裁する第3者機関として、「学校保護者相談室」を設けている。学校からだけでなく、保護者からも相談することができる。元小学校校長らが相談員を務めている。相談員の判断で弁護士に意見を聞くこともある。

   ある学校関係者によると、子供同士が学校でぶつかり1人がけがをした。賠償金を払うべきか校長が判断しろ、と言われ校長がまごついていると、双方の親から「校長が悪い、学校を訴える」と言われた。同相談室には「親から訴えるぞ、と言われたが、どこにどういう非があるのか分からない」と相談とも悲鳴ともつかない内容の訴えもあるという。

   もっとも、年間約200件のうち、学校からの相談は約1割。9割は親から学校に対して不満がある相談だ。「困った親」ばかりではなく「困った先生」もいる、という指摘もあり、ケース・バイ・ケースのようだ。