仕事上のやりとりで、上司に「ばかやろう」と言ったことを理由にした解雇は無効。こんな判決が2007年5月9日、名古屋地裁であった。判決は「発言は1回限りで合理的な解雇理由とは言えない」とした。上司への暴言、どこまでなら解雇されないのか。

   名古屋地裁の裁判は、日系ブラジル人の男性が、勤務先の人材派遣会社を相手取り、解雇無効の確認などを求めていた。男性は06年6月、有給休暇の申請方法を巡り上司と電話で口論となり「ばかやろう。おれは子供ではない」と発言し、翌7月に解雇された。判決は解雇処分の無効と判決確定時までの給与支払いを命じた。

   「ばかやろう」発言が2回だったら判決はどうなっていたのか。不当解雇問題に詳しい佐藤仁志弁護士に話を聞いた。J-CASTニュースの取材に対し、佐藤弁護士は「何回までなら言っても大丈夫というはっきりした線引きはない」と答えた。しかし、暴言を繰り返す行為は、反抗的で業務命令に従わないと認定され、解雇が合理的だと裁判所が認める可能性がある。

机の上のものをひっくり返すと処分は?

   暴言より進んで、机の上のものをひっくり返した場合はどうか。佐藤弁護士が数年前に扱った件で、会社側が解雇したのは無効だとする判決が出たことがある。会社側が「暴行を働いた」として解雇したが、判決は、暴行に当たるが解雇するまでの理由にはならないと判断した。この場合も机の上のものをひっくり返す行為は1回きりだった。

   発言や行為の程度にもよるが、継続して行うと解雇理由に当たると判断されるかもしれない。

   もっとも解雇理由については、後からつけたような場合も少なくない。最初からリストラありきで、解雇の理由を会社が探している場合もある。数は多くないが、組合活動に対する会社側の不満が背景にある場合もある。1回の行為で会社が解雇に踏み切ることはあり得る。

   ただ、「ばかやろう」といった暴言は、解雇理由にはならなくても、戒告などの懲戒対象になることはありそうだ。名古屋地裁の裁判に先立つ仮処分の決定の中で、同地裁が指摘している。