日経が「大誤報」の先頭を切った

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   日興コーディアルグループの上場維持が決まってから2007年4月12日で1ヶ月が経過したが、東証の決定やマスコミ報道をめぐる賛否両論が今なお続いている。東証が上場廃止を決定した西武鉄道カネボウライブドア、或いは上場維持を決定した蝶理日本テレビニチイ学館など過去のケースでは、これだけ東証の判断が物議を醸したことはなく、「鳴り止まない雑音」(東証関係者)に東証幹部らは困惑を隠さない。

大手新聞、検証記事の形で言い訳の芸を競う?

   まず、マスコミ報道をめぐる「その後」を紹介しよう。「週刊現代」は4月21日号「新聞の通信簿」で、「日興上場維持」を取り上げた。「勝ち負けを先に言うと、『毎日』だけが誤報を流さず、一人勝ちした」と、大手紙の誤報問題を論評。評者の経済評論家、山崎元氏は「他5紙は、上場廃止が既決であるかのように誤報し、後から、検証記事の形で、言い訳の芸を競った」などと酷評した。

   大誤報の先頭を切った日経について「『観測にすぎないものを断定的に書いてもよし』とする傲慢な思想と、自己批判ができない社風は改善を要望したい」と、鋭く突いている。産経は「自社でも間違えておいて、これを差し置いて、他紙の批判とはいかがなものか」と最低の評価。東京新聞は「率直に誤報を反省している点は好感。身内に甘いとの東証批判もいい」など、週刊誌のコラムとしては痛快だった。

   この1カ月、テレビ朝日の「サンデープロジェクト」をはじめ、テレビや雑誌は東証の上場維持決定に対して、「ライブドアが上場廃止になったのに、日興が上場維持なのは明らかにおかしい」などといった素人受けする、しかし乱暴な議論が多かった一方、東証の決定を評価する論調も存在した。

東証の判断に否定的な論調がやまない

   作家の村上龍氏の「村上龍事務所」が発行するメルマガ「Japan Mail Media」は3月26日号で、「村上龍、金融経済の専門家たちに聞く」と題して、日興問題を取り上げている。この中でメリルリンチ日本証券の菊地正俊ストラテジスト、外資系運用会社の金井伸郎氏らは東証の上場維持決定を冷静に評価している。大誤報をした新聞は兎も角も、テレビや雑誌など既存メディアでは、その後も「日興が安倍政権を利用して上場維持を勝ち取った」式の、根拠なき報道が多い中、インターネットを通じた多様な言論は一読に値する。

   証券業界系の財団法人「資本市場研究会」が発行する「月刊資本市場」も4月号で「日興株、上場維持――賛否分かれる東証判断」を掲載したが、「『(日興は)証券会社としての責任は大きく、市場への影響を考えれば上場廃止にすべきだった』との批判も根強い」などと、東証の判断には否定的だ。東証幹部は「いったいいつまで、この手の論調が続くのか。これらの疑問には、西室社長が会見ですべて反駁している。さすがに大新聞では、この手の無責任報道はなくなったのに‥」と憮然とした表情だ。