販売店が不安募らせる 日産の販売ネットワーク改革
国内販売の不振脱却と今後の成長に向けて、販売ネットワークの改革を打ち出した日産自動車。だが新たに導入する販売店舗支援策のゾーンスーパーバイザー制度について、販売会社側から疑問の声が聞かれる。日産の国内販売不振の大きな要因は、新型車の投入タイミングを誤り、量販車の新型投入が無い状態が続いていることだ。販社はそれがわかっているから、改革よりも即効性のある新型車投入を望んでいた。ところが日産は、まず売れるための店舗強化を選択した。販社は改革を後ろ向きの施策と捉え、不安を募らせている。
本社が店舗を直接指導する方式に反発
日産は2007年4月から全国を10地域に分けた地域カンパニー制を導入した。独立系地場資本の販社86社はそのままだが、今後、直営販社52社の本社機能を10地域に設立する地域統括会社に集約する。ゾーンスーパーバイザーは、全国で300人を販社などから募り、各地域統括会社に配属する計画だ。
日産の国内販売体制は現在、直営・地場資本をあわせて全国138社2400店舗がある。同じ商圏であっても、商品が売れる店舗と売れない店舗、評判の良い店舗と評判の悪い店舗など、店舗間の格差が生じている。それぞれの店舗の弱点を解消して強い店舗とするためには、現在のように、いちいち販社の営業本部などを通していたのでは時間が掛かりすぎる。そこで日産は店舗を直接指導する必要があると考えた。
ゾーンスーパーバイザー制度は、全国に配置したゾーンスーパーバイザーが、店舗に対して売り方や顧客満足(CS)向上策などを直接指導する。1人のゾーンスーパーバイザーが担当する店舗数は10店前後。指導は店舗を統括する販社の営業本部などを通さずに行うものだから、販社の幹部は気分が良くない。しかも指導する店舗は、直営や地場資本といった販社の枠を超えた担当地域のすべて。店舗側も、ゾーンスーパーバイザーによって販売の秘訣が近隣の店舗に渡ることは阻止したい。同じ日産の看板を掲げていても店舗同士はライバル関係にあるのだ。
「過去の失敗策を今風にアレンジしただけ」?
各販社・店舗には、それぞれが築いてきた売り方やCS向上策のノウハウ、代々受け継いできた取り組み方がある。ゾーンスーパーバイザーの指導によってその特性が薄まり、さらに店舗のプライドが低下して、販売力も下がることが危惧されている。
日産はかつて、80年代から90年代に国内営業部門に地域営業部制を導入し、指導の流れを縦型から横型へと変えた時期がある。結局うまくいかずに流れは縦型に戻ったわけだ。その頃を知る販社の幹部は、今回の制度を「過去の失敗策を今風にアレンジしただけ」と酷評する。当時失敗した一番の原因は、情報提供や指導を行う担当者の意識や能力と、販社に対する日産本社側の対応、さらに販社が抱いた変革に対する不安だ。
店舗の管理職は「日産は販売のノウハウを持っていないからゾーンスーパーバイザーを販社から登用する」とみる。国内販売体制の改革による第1号のゾーンスーパーバイザーたちは6月に東海地域で誕生する。ゾーンスーパーバイザー制度の成否は、プライドの高い店舗が納得できる人材を、日産がどれだけ集められるかにあるようだ。