日テレと山中湖村、どっちが問題だったのか(日本テレビ放送「報道特捜プロジェクト」より)

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   「じゃどうしましょ!!」。こういって机を叩いて怒るのは山中湖村前村長。日本テレビで放送された報道番組「報道特捜プロジェクト」の1コマである。調整池建設を決めた際にデータをすりかえたのではないか。そう日テレ取材班に詰め寄られた際に、前村長が都合が悪くなり一方的に怒りだした、かのように見える。実は、この「報道特捜プロジェクト」をめぐって山中湖村役場が怒りまくっている。しかも、日テレとの抗争はもう1年近く前から始まっていたのである。

   山中湖村が、日本テレビの報道番組「報道特捜プロジェクト」について、取材放映の客観性・中立性の欠如と捏造の疑いがあるとして、放送倫理・番組向上機構(BPO)に苦情申し立てをしたのは07年2月19日のこと。1月20日に放送された同番組に「捏造の疑いがある」と指摘したほか、日テレが06年春に取材・放送した番組を含む計4番組について中立性と客観性に問題があると指摘している。

「中立性と客観性の問題」がある、と村は主張

   同村企画課によれば、「中立性と客観性の問題」があるというのは例えば次のような具合だ。
   まず、06年4月5日に日テレの取材班のインタビューを企画課長、建設課長、建設係長が1時間半以上受けた。

「1時間半以上取材を受けたのに、そのシーンは『ちょこちょこ』としか放送されませんでした。しかも、助役が黙ってしまったシーンなど、意図的にこちらが対応してないかのように編集され、話に応じている内容がほとんど報じられなかった」

   こう語るのは、実際に取材をうけた企画課長である。こうした報道内容を問題視した同村は苦情申し立てを日テレ番組審議会にしたほか、06年7月に同局から依頼されたカメラでのインタビュー依頼を断っている。
   さらに、同村が「捏造」と指摘するのは、番組内で山中湖村民として登場した女性は実際には山中湖村に住民登録していない人物だった点だ。

「さっき本人が来て、住民登録してないが、実際は村に生活実態のあるひとだったことが分かりました。しかし中立性・客観性についてはまだ問題があると考えています。(調整池については)賛成するコメントを日テレ側にしたのに放送してくれなかったという人もいました」(同課長)

息子の会社が落札しても「問題ない」??

   観光地である同村では、宿泊施設のキャンセルなども相次ぎ、「村民の方がだいぶ怒っていた」という。役場には「言うべきことは日テレにしっかり言うべき」との村民の声も寄せられた。
   そして、冒頭の前村長の「一方的『逆ギレ』シーン」については次のように述べている。

「(一貫して取材をしてきた)制作会社は、最初から取材の仕方に威嚇的なところがありました。前村長についても、そういった態度が興奮させたのかなと思います」

   しかし、一方で前村長はこの取材でトンデモな事実まで明らかにしている。それは、前村長が村長在任時代に、村長の息子の会社が調整池工事を落札していることだ。前村長は「(道義的に)問題ない」としているが、変な話だ。同村企画課は日テレが放送で示している数字については、「こっちが提供したもので間違いはない」としている。とすれば、放送にあったように、同村は無駄なハコモノに莫大な補助金をつぎ込み、しかも不透明な落札をしていたことになる。J-CASTニュースが「本当に税金のムダ使いはないのか」と問いただしたところ、

「必要なものに必要な処置をしています」

   とだけ答えた。
   J-CASTニュースは一方の日テレにも、事実確認や見解などを求めたが、前回日本テレビの取材姿勢についてたずねた際に返ってきたものとほぼ同じ内容の回答が書面で寄せられた。

「本日2月23日付で質問書を拝受いたしましましたが、回答については差し控えさせていただきます」