つい物事を「先延ばししてしまう」のは睡眠不足を解消させれば改善可能との研究結果
by Daniel Novta
やる気が起きない時、気が進まない時に、やるべき事をつい先延ばしにしてしまった経験は誰にでもあるはず。しかし、先延ばししてしまう傾向があまりにも強い場合は「PCN症候群」とも呼ばれ、社会生活に大きな影響を及ぼすことになります。そんな「先延ばし」の原因はこれまで本人の性格にあると思われてきましたが、実験により個人の資質ではなく睡眠不足が原因となっている可能性が高いことが明らかになりました。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2018.02029/full
Study finds that low-quality sleep can lead to procrastination, especially among people who naturally struggle with self-regulation - Solving Procrastination
https://solvingprocrastination.com/study-procrastination-sleep-quality-self-control/
◆実験
「先延ばし」の原因を追求すべくアムステルダム大学のWendelien van Eerde氏とMerlijn Venus氏が行った実験は、金融業・公務員・建設業・医療従事者・小売業などさまざまな仕事に就いている平均年齢35歳の男女71人を対象に2度のアンケート調査を実施するというもの。最初の調査では「誘惑に抵抗するのが得意」「悪い習慣を直すのに苦労している」などの4つの質問に対する5段階の回答により自制心の強さを評価しました。2度目の調査では1日2回のアンケートにより「睡眠の質」と、その日の仕事における「先延ばし度」を評価し、自制心と「睡眠の質」及び「先延ばし度」の関係性を調べました。なお、「先延ばし度」の評価には、「その日は仕事中に時間を無駄にしてしまいましたか」「その日なにかをやると決めてから、故意に実行を遅らせましたか」という質問に回答してもらうという「日記法」が用いられています。
by BrianAJackson
◆実験結果
アンケート調査の結果をVan Eerde氏らが分析したところ、「睡眠の質は翌日の先延ばし度に有意な影響を及ぼす」「睡眠の質が悪い場合、自制心が強い人より弱い人の方が、より強く悪影響を受けた」「睡眠の質が良い場合、自制心の強さにかかわらず先延ばし度は低かった」という結論が導き出されたとのこと。また、先延ばし度は被験者間で一定ではなく日々の変動が大きかったので、先延ばしにしやすい傾向は個人の資質よりも睡眠の質などの要因により強く影響を受けているということも判明しています。
by Elegant01
自制心が強い人は睡眠の質に影響を受けにくい一方で、自制心が低い人は睡眠の質から受ける影響が大きいという今回の実験結果は、「先延ばしをしてしまう人」は「先延ばしをするような性格の人」なのではなく、「先延ばしを引き起こす要因の影響を受けやすい人」なのだということを示唆しています。また、自制心の強さにかかわらず、どんな人でも睡眠の質を改善させることで、先延ばしにしてしまう可能性を大きく減少させられることも判明しました。
◆先延ばし対策
先延ばしを防ぐためには睡眠の質を改善させる必要があることが分かりましたが、そのためにはやっかいな問題を解決する必要があります。それは、「就寝の先送り」という現象です。「就寝の先送り」とは、疲れている時ほど眠りに就くのを先延ばしにしてしまいがちになるという現象で、この現象のせいで翌日にはさらに疲れてしまい、その結果眠りに就くのがさらに遅くなってしまうという悪循環が発生してしまいます。
By @Matthew_T_Rader
この問題は、眠りに就くのが遅れてしまう原因を特定して排除することで対処することが可能です。例えば、夜遅くまでPCやスマートフォンでSNSを見たりゲームをしたりしてしまう場合は、あらかじめ設定した時間を過ぎるとSNSやゲームをブロックするような拡張機能やアプリをインストールすることで夜更かしを防止することができます。
以下の記事では、YouTubeやNetflixといったムービーサイトや、FacebookやTwitterなどのSNSへのアクセスを禁止したり、マイリストやコメント欄といった機能の一部を制限したりすることで時間の無駄遣いを防いでくれるChrome拡張機能を取り上げています。
TwitterやYouTubeを制限して時間の無駄遣いを防止してくれるChrome拡張機能「UnDistracted」 - GIGAZINE