何でもかんでもミニバンの現状に待った!

 クルマに大きめの荷物を積む機会が多い、ペットとともにドライブに出掛けるためのクルマを探している……そんな人たちがクルマ選びで悩むのが、ミニバンか、ワゴンか? ではないだろうか。

 じつは、ホンダ・オデッセイのように、低フロアで3列目席を“床下”にフラット格納できるミニバンなら、3列目席格納前提で、大容量ワゴン変身させられるのだ。

 が、荷物やペットを運び、乗せる機能にも特化しているワゴンならではのメリットは数多い。

1)低全高で立体駐車場への入庫も容易

 ミニバンは背の高さが命。Mクラスボックス型がミニバンの主流になっていることからも、それは明白。室内で子供が立って歩けるぐらいの室内高、大空間こそ、ミニバンを選ぶ大きな理由となる。しかし、そのためには全高が高くするしかない。

 たとえば、2018年上半期のミニバン販売台数NO.1のヴォクシー&ノア、エスクァイア軍団の全高は1825mm(4WDは1865mm)もある。この高さが売れ筋ミニバンの最適値とも言えるのだ。

 となると、立体駐車場への入庫は不可能。出先の駐車事情で困ることがある。その点、セダン同等のワゴンの全高は立体駐車場への入庫も容易な高さとなる。

 たとえばマツダ・アテンザワゴンは、FF、4WDを問わず1450mmでしかない。車幅制限はともかく、立体駐車場への入庫で高さ方向の制限を受けることはない。どうしても3列シートで立体駐車場に入庫したいのなら、全高1530〜1540mmのホンダ・ジェイドが唯一の選択肢となるが、ミニバンらしい室内空間は期待できるはずもない。ジェイドは2018年春に加わった2列シートのワゴン版により大きな価値、魅力、実用性がある。

2)低重心を生かした走りの良さ

 ほとんどのミニバンに対して低全高のワゴンは、基本(ベースとなるもの)はセダン、またはハッチバックだ。よって重心も低く、走りはセダンライクであり、車種によってはスポーティーな走りも楽しめる。カーブ、山道での安定感の高さにそれは表れる。

 乗り心地にしても、重心の高さから倒れ込み、過大なロールを防ぐため、足まわりを固めざるをえないミニバンに対して、セダンに準じた快適性重視の足まわりセッティングが可能。より上質な乗り心地を得ていることが多い。

じつは後席の乗り心地もワゴンが勝ることが多い

3)絶対的燃費性能の高さ

 ミニバンは背が高いだけでなく、人気車種は両側スライドドアを備え、バックドアも巨大になるため、その補強も含め、車重が増加する。同パワーユニットを使うワゴンとミニバンがあるとすれば、ワゴンのほうが軽量で、空気抵抗などの走行抵抗を含め、その実用燃費差は小さくない。

 一例として、同エンジン、同モーターのHVシステムを搭載するホンダ・シャトルとフリードを比較すると、JC08モード燃費は中間グレードのシャトルHV Xホンダセンシングが車重1220kgで32.4km/L。フリードHV Gホンダセンシングが車重1410kgで27.2km/Lと大きく差がつく。実燃費差はさらに広がる場合もあったりする。

4)ラゲッジルームの使い勝手

 たしかにミニバンでも3列目席を格納すれば、拡大したラゲッジルームを大容量ワゴンのように使える。

 しかし車種によっては開口部に段差があり、3列目席使用時のラゲッジ奥行きはミニマム。たとえ3列目席を格納してラゲッジルームを拡大したとしても、フロア部分にシートスライドのレールがあったりして完全なフラットフロアにはならず、荷物の積載はともかく、たとえばペットを乗せるには適さなかったりする。

 ワゴンの場合はシートアレンジすることなく、車種によっては高級感、振動騒音吸収性能さえある分厚いカーペットが敷かれた、ペットも快適に過ごせるラゲッジフロアが約束される。ワゴンにはキャビンとラゲッジルームを仕切るパーテーションネットが用意されていることもあるが、ミニバンにはまずない安全・便利装備である。

5)後席のかけ心地と振動のなさ

 ミニバンの特等席と言えるキャプテンシートの2列目席とワゴンの後席を比べた場合、乗り心地、振動性能に優れるのはほぼワゴンである。ミニバンのキャプテンシートはシートスライドするため、レールの上に数点の支持で乗っているようなもの。しかも豪華なキャプテンシートは重く、重心も高いため、路面によって微振動が起こりやすい。それが、長時間の乗車になると疲労感につながることもある。

 その点、ワゴンの後席は車体にしっかりと固定されているため、微振動が抑えられ、快適度につながるというわけだ。もちろん、ミニバンのキャプテンシートのほうがかけ心地のぜいたくさ、見晴らしがいいなどのメリットがないわけではないのだが……。

 まとめると、立体駐車場への入庫容易性、低重心がもたらす走りの良さ、燃費性能、純粋なラゲッジルームの使い勝手、そして後席の快適度で、ワゴンが優位に立つ場合があるということだ。