全国の警察で、必要性の低い信号機を撤去する取り組みが進められています。岐阜県警では広く住民の意見を取り入れるべく、リーフレットなども作成。どのような信号機の必要性が低く、またなぜ、そのような取り組みをしているのでしょうか。

「不要な信号機」、教えてください

 岐阜県警がウェブサイトやリーフレットなどを通じ、必要性の低下した信号機の撤去について意見を集めています。


信号機のイメージ(画像:写真AC)。

 具体的には、「車や人が通らないのにぽつんと立っている信号機」「交通量が少なく、自動車の信号無視が認められる信号機」「車が来ないので、横断歩行者が押ボタンを押さないで赤信号で渡ってしまうような歩行者用信号機」などを必要性が低いものとし、気付いた点があれば連絡してほしいとしています。同県警の交通管制センターに話を聞きました。

――なぜ信号機の撤去を検討するのでしょうか?

 老朽化した信号機が増えていることもあり、必要性が低くなった信号機を撤去する取り組みが全国的に進められています。本県では2017年度から本格化させました。

 撤去対象となる信号機の近くに住む方には詳しく説明できますが、そこを通過する地元以外の方の意見はなかなか聞くことができません。地元の意見だけでは偏りも出てきてしまいます。そこで、取り組みを周知し、広く意見を求めるべく、ウェブサイトやリーフレットでお知らせをしています。

――これまでに撤去した例はあるのでしょうか?

 2017年度には3基、2018年度には、これからのものも含めて16基の撤去を予定しています。なかでも多いのは、赤や黄色を常時点滅しているものです。信号を見落としやすいという意見が出て、これを一時停止の規制に代えたところ、「見やすい」「『止まれ』の文字もあってわかりやすい」といった感想をいただいたケースもあります。

そもそも必要があって設置されたのでは…?

――そもそも、必要があって設置されたものではないのでしょうか?

 もちろんそうですが、環境も変化しています。たとえば、撤去した信号機のひとつに、高速道路ICの出口に設置されていたものがあります。設置当時はそのICが終点で、通行車両も多かったのですが、高速道路の延伸で途中のICになったことで状況は変わりました。ほかにも、学校の前に設置されている信号機が、廃校によりあまり使われなくなるといったケースもあります。

 また、(2015年に)信号機の設置指針が警察庁から示されたことも、撤去の検討が進んだ大きな要素のひとつです。それ以前は統一的な指針がなく、地元の要望や担当者の感覚で設置される側面もありました。

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 警察庁が示した「信号機設置の指針」では、主道路(交差点に接続する道路のうち幅や交通量が大きいほう)の1時間あたり往復交通量が最大300台以上であること、隣の信号機との距離が原則150m以上離れていること、などの条件に合致する場合に「信号機の設置」を、合致しない場合は「撤去を検討」するものとしています。

 背景に存在するのが信号機の老朽化問題です。警察庁は、2015年の段階で全国およそ20万ある信号機のうち2割にあたる約4万基が、耐用年数である設置後19年を超過しているとしていました。このため、信号機を更新するだけでなく、信号機そのものの数を減らす取り組みが全国で進められているのです。


信号機を撤去し、一時停止の規制やカラー舗装などで代替する例がある。写真はイメージ(画像:photolibrary)。

 岐阜県警によると、信号が撤去された箇所では主に、一時停止の規制が導入されているといいます。信号機は点検も専門の業者が行う必要がありますが、標識や道路標示であれば警察官でもできるといい、維持管理上のメリットも大きいとか。

 ちなみに、岐阜県警は老朽化問題が顕在化する以前から信号機の更新を進めており、2018年3月末時点で更新基準を超えたものの割合は全体の約2%とのこと。これは全国で最も低い値だそうです。必要に応じて信号機の新設も行っており、2018年に4基設置したといいます。

【写真】老朽化した信号機が突然倒れた例


老朽化した信号機が倒壊した事例。更新基準である製造後19年を超えた信号機が多数存在している(画像:警察庁)。