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■俺流に固執する、ダメ上司に要注意!

「黙って俺についてこい!」。そんな自信満々な上司は、ことドラマや小説では格好良く描かれます。ひと昔前は、「日本男児」あるいは「姉御肌」な頼れる上司だったかもしれません。

しかし現実には、「自分についてきたら損はさせない」と口にする上司が、頼れる上司かというと甚だ疑問です。口ばかりで、実績を残せず出世をしない人も多いものです。

そんなダメ上司の大きな問題が、自分のやり方がすべてと思い込んでしまっていること。過去の成功体験に囚われて、他のやり方に目を向けることができなくなっている。それゆえ、他人の言うことを聞き入れない。そんな上司には誰もが心当たりがあるのではないでしょうか。

そんな「俺流」に固執する人の中にもの凄いカリスマ性の持ち主がいるかもしれません。ただ、それはひと握りのデキる人。誰もがそのカリスマ性を持った上司になれるわけではないのです。

昨今のパワハラ上司や、日大アメフト部や日本ボクシング連盟などのスポーツ界で立場を築いた人たちの不祥事を見るにつけ、「カリスマ」という虚像は脆いものと思います。

しかも、1つの方法がいつまでも通用するような、単純な価値観で処理できる仕事はどんどん世の中から減ってきています。むしろ、複眼的に物事を捉え、仕事にあわせて自己をアップデートできる人材のほうが、今後活躍できると言えます。

大切なのは「自己評価が少しでも傷ついたら、などと過敏にならないこと、そのうえで、十分に内省的になること」です。たとえば、この記事を読んで、「自分にも直すべきところがあるな」と自分の欠点を見つめ直そうと思える人は大丈夫。そうならずに、「こんな奴がいるのか」と他人事のように思うあなたはかなり危険です。自己評価と、他人からの評価をきちんと冷静に分析できない。言い換えれば、他者からのフィードバックを活かせない人です。内省的になれない人、他者の考えを受け取れない人はリーダー向きではなく、上司にもなってはいけません。

部下としては、そんな上司とは「ほどほどに接していく」しかありません。面従腹背という言葉があります。表面上は従うように見せかけて、本心では距離を置いておく。もちろん、取り入れるところは取り入れてもいいわけで、自分をうまくコントロールすることが求められます。その点、ダメ上司は反面教師となります。

■誰とどう付き合うか、見極めが肝心

そもそも、これだけ仕事が複雑化して、リスクが様々なところに潜む社会において、「特定の誰かについていったら万事安全」ということはありえません。リストラ、業界の不振……何が起こるかわからない社会では、どの人にどう接するか、どれくらいの人間関係の「幅」を持つか、きちんと自分自身で思考し続けることが大事です。

言ってしまえば、「俺についてこい」という自己流上司は、そういう「幅」の大事さが見えていない人です。それだけでも、ついていかないほうがいいと言えるでしょう。

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岡本 真一郎
愛知学院大学心身科学部心理学科教授
岐阜県出身。『悪意の心理学』『言語の社会心理学』(いずれも中公新書)など著書多数。

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(愛知学院大学心身科学部心理学科教授 岡本 真一郎 構成=伊藤達也 写真=iStock.com)