新しいiPhoneはさらに大画面化し、名前はなんと「iPhone Xs Max」?(写真は左からiPhone 8、iPhone X、iPhone 8 Plus:筆者撮影)

アップルは9月12日にカリフォルニア州クパティーノの本社内にあるSteve Jobs Theaterで、スペシャルイベントを開催することを明らかにし、プレスに招待状を送付した。招待状には「Gather round」というキャッチコピーとApple Parkを模したとみられる円形のイラストが、金色で描かれていた。

昨年、2017年も9月12日にイベントを開催し、iPhoneとApple Watchを披露した。2018年も同様に、iPhone 3モデルとApple Watchの新版が発表されるとみられている。

このスケジュールからすると、9月14日に予約が開始され、9月21日に発売されることになるだろう。発売日の前に、6月の開発者会議で発表されていたiOS 12、watchOS 5などの新OSも無償アップデートが開始されるはずだ。

今年もリーク合戦の様相

例年通り、アップルからの正式な発表以前から、新型iPhoneに関する予測が様々なメディアで報じられてきた。これらを総合すると、有機ELディスプレイを用いたiPhone Xの後継と、その大画面モデル、そして全画面液晶ディスプレイを備える廉価版の3つのモデルが用意されると考えられてきた。

招待状の送付と前後し、アメリカのアップル系ブログメディア「9to5mac」は、新型のiPhoneやApple Watchの画像を掲載した。その画像には、iPhone Xと大画面モデルが、招待状に用いられたような金色のボディで描かれている。

iPhone Xはステンレススチールのフレームとガラスの背面を持つスマートフォンで、シルバーとスペースグレーの2色が用意されていた。ゴールドモデルも試作していたようだが、結局発売されなかった経緯がある。

全画面モデルがメインストリームとなる中で、これまでのiPhoneでは取り揃えていたゴールドモデルが追加され、選択肢が拡がることは歓迎すべきだろう。

大画面モデルに「マックス」?

9to5macは、標準画面モデルの名称を「iPhone Xs」、大画面モデルの名称を「iPhone Xs Max」と伝えている。この「Max(マックス)」というモデル名に違和感を覚え、ガッカリした方も多いのではないだろうか。筆者もその一人だ。

これだけ慎重にブランド感を高めてきたアップルが、iPhoneの接尾語に、Maxという力強い語感と意味を持つ単語を使ってしまえば、iPhoneの洗練されたブランドイメージが「台無し」になる印象を受ける。

ルーマニアのオンラインモバイルショップ、Quickmobileはウェブサイトに発表前のスマートフォンの画像を掲載したが、ここにも「iPhone Xs Max」の名称が表示されている。ただ、同様に掲載された廉価版も含め、カラーバリエーションに関してこれまでの情報と一致していないため、信憑性の面で評価しにくい。

これまでのiPhoneのモデル名のネーミングのルールをふりかえってみると、「iPhone」の後に続くのは、「3G」「s / S」「c」「Plus」という4種類だった。

「3G」は2008年発売の第二世代のiPhoneに名付けられたが、第三世代通信(3Gデータ通信)に対応したことから、「3G」が名付けられた。次のモデルは2009年のiPhone 3GSで、2年ごとにデザインが変更され、1年目は数字のみ、2年目は「S」もしくは「s」を添えるルールとなり、これが2016年のiPhone 7まで続いた。

実は昨年のモデルはiPhone 7sシリーズになるはずだったが、背面がガラス化されるなどデザイン変更が伴ったため、「iPhone 8」として登場した。今回廉価版として予測されるiPhoneも、iPhone 8からデザインが変わるため、もし数字を用いた命名ルールを続けるなら「iPhone 9」と名付けるのが妥当だ。

また、iPhone 6以降、大画面モデルが追加されるようになり、こちらは「iPhone 6 Plus」のように、「Plus」という名称が付けられ、2017年も「iPhone 8 Plus」というモデル名で5.5インチ大画面モデルが登場した。

これまでの経緯から考えれば、「iPhone Xs」と「iPhone Xs Plus」という展開が自然だが、「Max」という接尾語がつくのであれば、iPhoneだけでなくアップルとしても製品名に用いる初めての接尾語となる。

一方で、MacBookシリーズ、iMacシリーズ、iPadシリーズはよりシンプルなモデル名を用意している。iPadの場合、最も価格が安い「iPad(第6世代)」、上位モデルは「iPad Pro 10.5インチ」、「iPad Pro 12.9インチ(第2世代)」が現在のラインナップだ。

無印と「Pro」、サイズ違いはインチ表示、というのが他の製品におけるルールとなっていることを考えると、「iPhone Xs 5.8インチ」「iPhone Xs 6.5インチ」「iPhone 6.1インチ」という展開の方がシンプルだ。

実際、iPhone Xs同士で性能や機能の違いは画面サイズとSIMスロット程度に限られるとみられている。そのため「Max」という単語が想起させるほど性能に大きな違いもなさそうなのだが…。

新型iPhoneが「最大化」するものとは?

新型iPhoneの実際の姿や名前は、日本時間9月13日午前2時からの発表会を楽しみにしておきたいところだが、iPhone Xs Maxの登場で「最大化」するのは何だろうか。

一つは、買い換えサイクルの短縮化だ。

もともとアップルは、2年ごとに割引き購入できる仕組みを各国キャリアとの間で作り上げ、iPhoneを2年サイクルで買い換える仕組みを作ってきた。しかし現在、スマートフォンそのものの性能向上から、スマートフォンの買い換えサイクルは一般的に2年を超え、3年程度に伸びてきている。

今回、液晶ディスプレイの廉価版iPhoneも、全画面化、顔認証に対応するTrueDepthディスプレイ搭載、そして6.1インチの大画面の搭載となることから、これまでのホームボタン付きのiPhoneに対して大きなデザイン変更となる。

現在46%とも言われる、2015年モデルのiPhone 6sかそれより古いiPhoneを利用するユーザーの買い替え需要の喚起、またAndroidからの乗り換えの促進につながると考えられる。飽和状態のスマートフォン市場で販売台数を伸ばすほぼ唯一の可能性を狙うことができるというわけだ。


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平均販売価格については、2018年のような大きな上昇は見込めないだろう。

2017年モデルはiPhone 8が699ドル、iPhone 8 Plusが799ドル、iPhone Xが999ドルからという展開で、iPhone Xが長らくベストセラーとなったことから、iPhoneの平均販売価格は大きく上昇した。

しかし、2018年では廉価版モデルが669〜699ドルからとなり、iPhone X後継モデルに899ドル、大画面モデルが999ドルという展開となる可能性が高い。今回、大画面モデルの販売比率がさらに大幅に上昇するとは考えにくいため、「販売台数が伸びなくても売り上げを伸ばす」という見通しは立てにくい。

となるとiPhoneの売り上げを伸ばすために必要なのは販売台数の伸びだ。つまり、2017年モデルでは「販売単価の最大化」を実現したが、2018年モデルでは「販売台数の最大化」を目指すのかもしれない。