そこで、カメラ各社は新しいタイプのカメラを探る動きを活発化している。CP+で人気を集めたのが、リコーの全天球カメラ「シータ」。多くの人が興味深そうに試し撮りしていた。CP+への出展はなかったが、カシオ計算機もエクストリームスポーツなどの撮影向けに、タフカメラの新ブランド「G’z EYE(ジーズアイ)」を17年秋に立ち上げた。

 王道を歩むキヤノンも商品化プロセスを変え始めた。コンセプト段階で市場からのフィードバックを反映し、環境変化に素早く対応するベンチャー企業のような手法を試みている。その一端を見せたのは1月に米ラスベガスで開かれた「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」(CES)。

 超望遠と中望遠の2焦点を簡単に切り替えられる手のひらサイズの単眼カメラなどを参考展示した。見た目はミニ望遠鏡のようで、スポーツ観戦時に望遠鏡としても使える。コラボレーションを求める引き合いが多く、戸倉執行役員は「既存とニュータイプで、カメラのスコープを広げることが活性化につながる」と話す。

<インタビュー> 
●カメラ映像機器工業会会長 牛田一雄氏「映像文化、伸びる余地ある」
 16年の熊本地震の影響を加味しても、市場は下げ止まり傾向が出てきた。スマートフォンで写真を始めた人たちが、ファインダーをのぞいてしっかり撮影したい人は一眼レフカメラへ、気軽に使いたい人はミラーレスへ向かうように、プロモート(促進)したい。

 今やスマホは誰もが持つインフラだ。そのインフラに、スマホでは撮れない暗所や望遠の写真を撮れるカメラが乗っかり、写真を共有してもらう。この点で考えれば、映像文化は伸びる余地がある。逆転できる。18年の結果が17年を上回れば本物になる。この1年に注目してほしい。

 また、スマホ世代は「カメラはこういうもの」という先入観がない。撮りたいものも人それぞれで、360度カメラやインスタントカメラなど、多様なイメージキャプチャーデバイスが受け入れられる。バリエーションを広げることもカメラの正常進化だ。

(文=梶原洵子)