2017年9月に公開されたクリストファー・ノーラン監督の映画「ダンケルク」は第二次世界大戦のダイナモ作戦(ダンケルク撤退)を描いた作品で、全編がフィルムで撮影され、極力CGを使わずに製作されたことで話題になりました。劇中に出てくる戦闘機が飛び交う空戦シーンもCGは使わず、本物の戦闘機を使って撮影されたとのこと。実際にどうやってその空戦シーンを撮影したのかが、ワーナーブラザーズ公式チャンネルがYouTubeで公開しているメイキングムービーで見られます。

The Dunkirk Spirit - YouTube

「ダンケルク」の空戦シーンを撮影するために、スーパーマリン スピットファイアの実機やメッサーシュミット Bf109に似せた戦闘機が使用されました。



海面に浮かぶ船をかすめるように低空飛行をする戦闘機も本物です。



IMAXカメラを使って可能な限りリアルな空戦シーンを撮影したいというノーラン監督のこだわりから、翼やコックピットに特製のハーネスをとりつけてIMAXカメラを固定し撮影するという手法がとられました。





飛行中のスピットファイアのコックピットを横から撮影するショットも翼の上に設置したカメラで撮影したものです。



機銃の照準をのぞき込むシーンは……



特殊なレンズを使ってパイロットの肩越しから撮影されています。ノーラン監督は、コックピットの中にいるパイロットの視点から見る戦争風景をIMAXカメラで収めることで、観客が本当に戦闘機に乗っているような臨場感を得られるような効果を狙っていたとのこと。



海面に上がる水柱をコックピットから眺めるシーンは非常にリアルで迫力がありますが、それもそのはずで、コックピットの風防・水柱・海面・軍艦の全てがCGではなく本物です。



リアルで迫力のある空戦シーンを撮るために、ノーラン監督や撮影監督のホイテ・ヴァン・ホイテマ氏は自らスピットファイアに乗り込み、戦闘機で飛ぶとはどういう感じなのかを体験したとのこと。





戦闘機にとりつけるだけではなく、他にもさまざまな撮影方法が採用されています。例えばこのヘリコプターは空撮用に用意されたものですが、機首にはジンバルがとりつけられ、IMAXカメラが固定されています。



また、飛んでいるスピットファイアやメッサーシュミットをさまざまな方向から撮影するために、機首や尾翼の付け根にもIMAXカメラを装着しています。





戦闘機と並んで飛びながら撮影を行う際は、ノーラン監督も飛行機に乗り込み、直接指示を出しています。



また戦闘機を操縦するパイロットの表情を捉えたこのシーンでは……



操縦席の模型を作って、IMAXカメラで撮影を行いました。昨今の撮影ではグリーンバックやブルーバックを用いた合成を使う部分ですが、リアルさを追い求めた結果、見晴らしのいい高台に操縦席を作り上げ、巨大なハンドルで操縦席を大きく傾けながら撮影するという手法を採用しています。







ノーラン監督自ら巨大なハンドルをぐるぐると回し、スタッフに指示を出します。



敵の機銃射撃を浴びるシーンでは、コックピットの風防のそばに弾着と呼ばれる装置をつけて撮影しています。



さらに戦闘機が着水するシーンでは……



IMAXカメラを固定した戦闘機を巨大なカタパルトで射出して撮影が行われました。



さらにそのまま海の中に沈んでいく様子を撮影するために、非常に高価なIMAXカメラをそのまま水没させて撮影を行ったとのことです。