沖縄の道路は「白っぽい」「滑りやすい」といわれることがありますが、舗装に地域差は存在するのでしょうか。全国で同じように見える道路の舗装、その材料はじつは「地産地消」でした。

沖縄のレンタカー店には道路に関する注意喚起も

 沖縄の舗装道路は、ほかの地域と比べて白っぽいといわれることがあります。また、雨が降ると滑りやすいといわれることもあるようです。


那覇市内の道路。沖縄の道路は白っぽいといわれることもある。写真はイメージ(画像:写真AC)。

 このように、舗装に地域性は存在するのでしょうか。道路の施工と舗装を手掛ける世紀東急工業(東京都港区)に聞きました。

――沖縄の道路は白っぽく、すべりやすいというのは本当なのでしょうか?

 はい。沖縄の道路では多くの場合、コーラルリーフロック(隆起珊瑚礁石灰岩)と呼ばれる石灰岩が使われており、この石の色が白いことから道路舗装が白く見えます。また、この石はすり減りやすく、車両の走行により舗装面が次第に磨かれてくるため、舗装面が滑りやすくなってしまいます。沖縄のレンタカー屋さんに行くと、このことが注意事項として掲示されていることもあります。

 道路舗装に使われるアスファルト混合物は、粗骨材(石)、細骨材(砂)、フィラー(砂より細かい粉)、アスファルトを高温で練り混ぜて作られます。アスファルト舗装は、施工直後は骨材がアスファルトに被膜されているのでアスファルトの黒色が目立ちますが、車両の通行が始まりしばらくすると、アスファルトの被膜がむけて骨材の色が目立ってきます。これが、沖縄の道路舗装が白く見える理由です。

――なぜそのような石灰岩が使われるのでしょうか?

 沖縄の地理的特性によるもので、現地で採取された石灰岩が主に使われるからです。また、沖縄は川も少ないため、砂利も採取しにくいということもあります。ただ高速道路では、沖縄県外から船で運ばれてきた石灰岩以外の骨材が使用されています。

「産業の地域性」も舗装に現れる…?

――地域によって舗装に差が生まれるのでしょうか?

 アスファルト混合物に用いる材料は、たとえば骨材であれば大きさや形、すり減り量など、それぞれに規格が定められています。沖縄で用いられている骨材も、これらの規格は満たしたうえで採用されているものです。また、できあがった舗装も同様で、特に安全性に関わる「すべり抵抗」にも規格があります。もちろん沖縄の道路もこれらを満たしていますので、ほかの地域と比べて相対的に滑りやすいということになります。

――沖縄における道路の白っぽさと同じような「地域性」は、ほかの地域でも見られるのでしょうか?

 舗装用骨材は基本的には現地産の材料を使用します。沖縄は有名な例ですが、地域により、石が緑っぽい、青っぽい、赤っぽいといった差があり、道路においても、そのような地域差を感じることもあるでしょう。

 地域性ということであれば、たとえば千葉や川崎など大規模な製鉄所のある地域では、製鉄所から出る鉄鋼スラグ(鉄鋼製品の製造工程で生まれる粉状の副産物)を路盤材やアスファルト混合物の骨材として使用するといった事例があります。このほかの産業再生資材では、一般廃棄物や下水汚泥の溶融スラグ、ガラスカレット(ガラスくず)などの利用も進められています。北海道では、廃棄される貝がらの粉を舗装に使用したこともありました。

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 世紀東急工業によると、素材の地域性だけでなく、施工する場所の特性に応じても様々な違いがあるといいます。

「温暖地、寒冷地で使用するアスファルトの硬さが異なっていたり、タイヤチェーンによるすり減りが懸念される箇所は細骨材やフィラーが多くされたりと、地域の気候や交通状況、施工時期などによって使用材料が使い分けられ、それに応じて仕上げ方法も異なってきます。たとえば関西空港のような埋め立て地のほか、盛土や泥炭地など、将来的に沈下が予想される場所に舗装する場合は、あらかじめ沈下を予測して施工することもあります」(世紀東急工業)

 ちなみに、沖縄以外で舗装の「色」に特徴がある地域として、世紀東急工業の担当者は「個人的な記憶の範囲ですが」としたうえで、「石川県の能越道は『緑っぽいな』と感じながら走っていました」と話します。

【写真】「カラー舗装」は別のお話


写真のような舗装の赤色は塗料であり、視覚効果のほか、すべり止め効果がある場合も(2018年2月、中島洋平撮影)。