しかし、これらはあまりにも楽観的に過ぎると感じる。英国とEUとは、離脱後もこれまでに近い関係を維持する「移行期間」に関する協定を3月末までに決定する必要がある。Brexitが来年3月に迫る中、交渉にはスピード感が求められるが、これまでの経緯を見る限り早期合意は不透明と言わざるを得ないだろう。

 たとえば、英国のロンドン(シティ)は、金融の世界的な拠点だが、Brexit後(移行期間後)にEU単一市場とのアクセスを失えば、EU拠点として機能しなくなる可能性もある。英国としては得意分野である金融については特例を求める考えのようだが、EUはそうした「切り売り」には否定的と見られる。

 今後、英国とEUの対立が表面化すれば、ポンドはこれまでの上昇の反動も相まって下落しやすくなりそうだ。

 ポンド/円でみれば、Brexitが決まる直前の価格は1ポンド=160円超の水準だった。今年の高値は156円台に乗せており、これ以上にポンド高が進むとは考えにくい。反対に、下値は148円台まであり得るだろう。

 ――その他、注目の通貨ペアは?

 メキシコペソが7月の大統領選挙を控えて目が離せない。現在、ドル安基調が続いているので、値を保っていられるものの、今後は波乱がありそうだ。

 現在、ポピュリストとされるロペスオブラドール氏が大統領候補の中で人気があり、10ポイント程度も支持率で優位にある。米国のトランプ政権に対し「思い知らせてやる」など過激な発言で、人気を博しているためだ。

 しかし、現実のメキシコ経済は、輸出の80%が米国向けなど、米国依存度が高い。メキシコ経済が堅調になっているのも、米国経済の好調の恩恵を受けてのことだ。米国との関係が悪化すれば、経済に深刻な影響が出ることは避けられない。

 したがって、選挙が近くなっても、現在のロペスオブラドール氏の人気が続いているようであれば、メキシコペソの不安定化は必至だ。原油価格の上昇など、メキシコペソに強気材料はあるが、政局には十分注意しておきたい。