マックが早朝から「濃厚グラコロ」を売るワケ
12月13日から販売される期間限定商品「超グラコロ」(左)と「熟グラコロ ビーフシチュー」(右)。朝マックの時間帯から食べることができるようになった(記者撮影)
今年の冬の定番商品は“一味”違うようだ――。日本マクドナルドは12月13日から約1カ月間、期間限定商品「超グラコロ」と「熟グラコロ ビーフシチュー」を販売する。
グラコロはグラタンコロッケを挟んだバーガーで、1993年の初登場以来、マクドナルドの冬の風物詩として定着した商品。超グラコロは、グラコロが2016年に23年ぶりにリニューアルされたことを「超」の文字で表現したもので、昨年に引き続いての投入となる。価格は340円(税込み、以下同)という設定だ。
期間限定商品の終日販売は初の試み
12月7日に開かれた商品発表会にはタレントの高田純次さんも登場した(記者撮影)
一方の熟グラコロは超グラコロにビーフシチューを加えた今回初登場となる商品だ。こちらの価格は超グラコロより50円高い390円。ビーフシチューソースには赤ワインや北海道バターを隠し味として使用した。
今回の2種類のグラコロの販売に際して、マクドナルドはこれまでにない取り組みを実施する。従来、期間限定商品は「朝マック」終了後の午前10時30分以降から販売を開始してきたが、今回のグラコロは朝から販売し、終日食べることができるようにした。
直近の期間限定商品である「デラックスバーベキュー」シリーズのハンバーガーは、朝マックの時間帯に「デラックスバーベキュー マフィン」など派生商品を投入した。だが今回は、期間限定商品の終日販売に踏み切る。
期間限定商品の投入の際には、ツイッターも活用した販促も行う(記者撮影)
朝食機会の市場規模は拡大傾向にある。外食・中食産業の継続調査を行っているエヌピーディー・ジャパンによれば、2016年11月〜2017年10月の外食・中食市場全体は1年間で1.6%しか伸びていない中、朝食機会の市場規模は3.6%伸びているという。
「働き方改革や、ライフスタイルの変化により、朝食の外部化需要が伸長している。手軽に朝食をその場で取ることができるファストフードは、このニーズに合っているため特に伸びている」(エヌピーディー・ジャパンの東さやかシニアアナリスト)。グラコロシリーズの終日販売は、本格的に朝食時間帯を強化していきたいことの表れといえそうだ。
ネーミングも工夫した
日本マクドナルドの足立光・マーケティング本部長。ネーミングを含め、マーケティング改革に取り組む(撮影:今井康一)
近年、マクドナルドが改革に乗り出したマーケティング戦略も今回の期間限定商品に生かされている。その1つがネーミングだ。
マーケティング本部の坂下真実・統括マネージャーは「超グラコロと対を成す商品、コクのあるビーフシチューを漢字1文字で表す商品として熟グラコロと名付けた。超と熟どちらがいいか会話が生まれるキャンペーンを提案していきたい」と語る。
こうしたネーミング改革を主導する人物が足立光・マーケティング本部長だ。足立本部長がマクドナルドに入社したのは2015年10月のこと。それまでP&Gジャパンや独ヘンケルグループ、ワールドなどでキャリアを積んできた。
9月に東洋経済の取材に応じた足立本部長は、「古くは(『巨人の星』の)星飛雄馬と花形満のように、ライバル関係は話題性を作る要素の1つ」と述べるなど、シンプルなネーミングと対立の構図を作ることが大事だと指摘する。
また、商品名を長くしないことも心掛けている。今年2月の期間限定商品も名作の「チキンタツタ」に、タルタルソースを使った新作商品「チキンタルタ」をぶつけるという構図だった。
11月は2ケタの伸びを記録
マクドナルドの既存店売上高は2017年11月まで24カ月連続でプラスが続く(撮影:今井康一)
「以前であれば『チキンタツタ』と『チキンタツタの和風おろし』としていたようなものを、タツタにライバル登場という意味合いでタツタとタルタとした」(足立本部長)。超グラコロも名前のわかりやすさにこだわった。漢字を用いたのは、ひらがなやカタカナより、ぱっと見て意味が伝わりやすいからだという。
マクドナルドの既存店売上高は2017年11月まで24カ月連続でプラス。9月、10月は7〜8%台の伸びだったが、11月は13.1%増と2ケタの伸びとなった。牽引役は高単価の期間限定商品「アメリカンデラックス」シリーズ。そのほか、「人生ゲーム」「黒ひげ危機一発」など家族で楽しめるおもちゃをつけたハッピーセットが売り上げを押し上げた。
朝食需要の取り込みなどに加え、ネーミングの工夫は売り上げに寄与するか。来年早々に発表されるであろう2017年12月の月次動向が、今回の取り組みの成果を見極める1つのポイントになりそうだ。