巨人・村田修一(C)KYODO NEWS IMAGES

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◆ 併殺ワースト10に巨人の4選手

 10月1日、阪神に敗れた巨人が2006年以来11年ぶりのBクラスとなることが確定。2007年からはじまったCSへの出場をはじめて逃してしまった。

 今季の巨人は13連敗や月間6度の完封負けなど球団ワースト記録が目立ったが、ここまでのシーズン129併殺も過去の124併殺を更新する球団ワースト記録。各メディアでも報じられているように、巨人凋落の要因の一面がこの記録に表れている。

 この129併殺はヤクルトの114併殺を抑えて12球団最多。リーグ上位の広島、阪神、DeNAの併殺数は順に95、97、99であり、巨人の数字はかなり突出したものとなっている。ちなみに、12球団最少はパ・リーグ覇者のソフトバンクで78併殺。さすがとしか言いようがない。

 併殺打数の個人ランキングを見てみると、2位・マギー(20併殺)、4位・長野久義(17併殺)、6位・坂本勇人(16併殺)、7位・村田修一(15併殺)と、巨人から4人がワーストテンにランクイン。ほかにも、11位・阿部慎之助(13併殺)、14位・小林誠司(12併殺)と、とにかく巨人の主力の名前が目立つ。

◆ ソフトバンク・工藤監督が誇る「諦めない心」

 もちろん、併殺の多さはチームの戦術によるところもある。12球団最少併殺を誇るソフトバンクは送りバントを多用するチームでもある。積み上げた犠打数154は12球団最多だ。対して巨人の犠打は86。これは12球団のなかでDeNAの84に次いで少ない数字となっている。

 しかし、DeNAの併殺打数は先述のように巨人よりはるかに少ない99であり、総得点592は、巨人の526を大きく上回るリーグ2位の数字。DeNAの場合は送りバントをしないという戦術がうまくハマっているということだ。

 足に不安がある選手も多いことで中途半端なバントによる併殺を避けようとしていることも巨人が強硬策をとる理由のひとつだろう。しかし、結果的にはそれが裏目に出て多くの併殺を生んでしまっている。これでは、首脳陣も、そして選手も無策と指摘されても仕方がない。

 阿部の場合は膝に故障の不安を抱えていることもあるが、ほかにも全力疾走の意識を欠く選手が目立つことも併殺増加の要因ではないだろうか。圧倒的な総合力でパ・リーグを制したソフトバンクだが、工藤公康監督は優勝監督インタビューで「うちが一番誇れるところは、どんなときにも諦めない、常に全力疾走するところ」と語っている。

 工藤監督が「他のチームと違う」と誇らしげに語ったのは、強力な打線でも盤石の投手陣でも堅固な守備でもなく、どんな当たりでも全力疾走をする諦めない心だった。ソフトバンクの併殺の少なさは、犠打を多用する戦術だけによるものではないということだ。

 ただでさえ併殺はファンを興ざめさせるものだが、全力疾走を怠っているようであればなおさらである。落ち目のときこそ応援するのが本当のファンとは言うものの、このままでは巨人のファン離れが進むことにもなりかねない。

 高齢化が進む主力からレギュラーを奪う若手を育てられていないことなど、多くの問題をはらむ巨人打線だが、まずは全力プレーという野球の原点へ立ち返る意識改革が必要なのかもしれない。

※数字は2017年10月1日終了時点

文=清家茂樹(せいけ・しげき)