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 昨今の過重労働(長時間労働)や違法残業が多くのメディアで取り上げられています。

 そのような中、残業時間に年間720時間の上限を設けたり、毎月最終金曜日は3時とするプレミアムフライデーの導入が検討されています。

 ワークライフバランスは大切です。しかし、安倍内閣の推奨する働き方改革は、過労死という言葉に代表される日本人の働き方の問題を本当に解決してくれるのでしょうか?

 1万人の働く人と面談を通じて経営陣と労働者双方をみてきた産業医の答えは残念ながら「否」です。今回はその2つの理由と、この問題の解決の方向について述べてみたいと思います。

◆会社に“滞在していること”が評価される価値観

 まず第1に、いろいろな名称で労働時間に制限や強制的な休養時間を設けても、その分の仕事を“いつ”“誰が”やるのかが解決できなければ、自分にそのツケ(仕事)が回るだけとなることが明らかだからです。

 このような指摘には毎回仕事の効率化・合理化が声高に唱えられます。効率化により、仕事時間を減らしてその時間を休みにしようというわけです。ごもっともですね。しかしここに、長年解決できていない問題が潜んでいます。

 それは会社に“滞在していること”を評価してしまう価値観です。成果(結果)主義が声高に叫ばれる中、結果を出すために時間を投資する(残業を多くする)人たちもいますし、反対に、結果が出ないからこそ、会社に“いる”ことで“やる気”を示そうとしてしまう人たちもいます。週40時間を超えて働かない権利や有給休暇を取得する権利は、働く人の持つ数多くの不安の前に実行できていないのが現状です。

 その対策としては、人々の意識改革のみならず、各労働者の仕事の成果を時間あたりで評価するような“時間軸”を含んだ評価方法の導入が必要なのかもしれません。実はこのことに気がついている企業はそれなりに多いと思います。しかしながら、“時間あたりの結果”という人事評価制度が普及しないのはなぜでしょうか。そこに、私が働き方改革を進めても結局は何も変わらないと考える2つめの理由があります。

◆仲間をクビにする勇気はあるか?

 第2の理由、それは本当に仕事が効率化・合理化されると、自分自身の仕事がなくなってしまう可能性を多くの担当者が気づいているということです。たとえ今自分は職を失わないとしても、自分の推奨した合理化の結果として同僚が職を追われるという事実、「自分もいずれは……」というリスクを背負う気持ちを、私たちの多くは持ち合わせていないのが実情ではないでしょうか。

 終身雇用を前提にその対価として会社に身も心も時間も捧げ、忠誠を果たしてきた自分や仲間の仕事をクビにする(クビの危険に晒す)大義はそうそう誰も持っていないのです。これは数年ごとに国家公務員の天下りが問題になっても結局はなくならないことからも明らかです。日本における負の文化、“お互い様”なのです。

 外国では雇用の流動性が日本よりもありますので、転職に対するハードルは日本よりは低いと聞きます。景気の波に応じて雇用者の人数が増減することは、いいこととは言い切れはしませんが、みな慣れたものです。雇用の流動性は日本における働き方改革実現のための解決策につながる基礎的な部分になるでしょう。しかし、それには時間がかかりすぎます。

 ではどうすればいいのでしょうか。

◆日本の有給消化率は世界ワースト!

 私は日本人のワークライフバランス推奨のために新しい制度は必要ないと考えます。それよりも現行の制度をしっかり活用することこそが近道でしょう。例えば、有給休暇の取得率の向上を企業単位で目指すことです。有給を取ることは、気分転換になるだけでなく、直接残業時間を減らすことにもなります。なぜなら、休んだ日は、そもそも残業ができないからです。