地方出身の女性が東京に上京するタイミングは、実は3回あります。

第1の波 : 「ファーストウェーブ」 地方の高校を卒業し、東京への進学。

第2の波 : 「セカンドウェーブ」    地方の学校を卒業し、東京への就職。

この2つの波はよく知られていますが、第3の波が存在していることは、あまり知られていません。

第3の波:「サードウェーブ」それは、

30歳前後で地方での人生に見切りをつけ、東京に新たな人生を求めて上京する独身女性達の潮流。

この波に乗り、30歳前後で地方から東京へ上京してきた独身女性達を『Suits WOMAN』では 「サードウェーブ女子」 と名付けました。地方在住アラサー独身女性はなぜ東京を目指したのか? その「動機」と「東京での今」に迫りたいと思います。

今回お話を伺ったサードウェーブ女子、工藤佳子さん(仮名・29歳)は青森県出身。身長150センチ前後の小柄で服装に派手さはないものの何処か主張があるような、強いて言えば舞台演劇にすべてをかけている劇団員の様な雰囲気を纏った女性です。言葉の端々に残る独特のイントネーションと訛りがチャームポイント。上京歴1年半で都内のデザイン会社でデザイナーとして働いています。

――「東京」ってどんなところだと思っていましたか?

「おっかない(※怖い)ところ。とっちゃ(※お父さん)もかっちゃ(※お母さん)もばっちゃ(※おばあちゃん)も、都会はおっかないとこだってみんな言ってました。ドラッグとか、ストーカー殺人とか、満員電車にはスリやひったくりが居て、家には鍵をかけないと泥棒が入る。知らない人が多くて人が冷たい(※人間関係が冷たい)とこだと思ってました。」

佳子さんは青森市からクルマでさらに1時間半ほどの郊外に、祖父母の代で開墾したりんご農園の長女として生まれました。佳子さんは歳が離れた妹さんと2人姉妹。夜、父親がお酒を飲んだ際に「男だったらなぁ」とたまにこぼすのに、幼少時から後ろめたさを感じることがあったといいます。それもあって地元の農業高校に進学したものの、農業とりんごには思い入れが持てず、“子豚めんこい(※かわいい)なぁ、でも食べられちゃうんだなぁ”などと物思いに耽っている間に高校3年間は過ぎて行ったといいます。卒業後は社会勉強も必要だと両親を説得し、地元の工業団地に就職。

「小さい頃から絵を描くのが好きで中高の文化祭では金賞をもらったり、展覧会に選ばれたりもしてそこそこ目立ってたと思うのですが、親はそういうのには全然理解してはくれません。工場に就職したのはお金を貯めたかったから。秋田に美術学校があって、本当はそこに行きたいとずっと思ってました。でも親はどうせ理解もしてくれないしお金も出してはくれない。自分でやるしかなかったんです」

佳子さんは工場勤めの傍ら美術学校の受験勉強をし、2年後に見事合格。学費と生活費の全て自分で負担し金銭的に一切迷惑をかけないから2年だけ秋田に行かせてくれと両親を説得、念願の秋田の美術学校に進学します。

「秋田の美術学校生活は楽しかったですね。同級生より2年歳食ってましたけど、社会人経験もあったのでお姉さんキャラしてました。同級生の彼氏ができて、つまり2歳年下ですね。学業も友達もバイトも楽しかったけれど、一番良かったのは両親と家とりんご農園から離れられたこと。誰も知らない土地で暮らすって初めは心配でしたけど、しがらみが無い生活って本当に良いなと思いました。地元ではみんな知り合いだったり親族だったりで、男子と一緒に学校から帰るだけで次の日にはあらぬ噂が学校どころか街中に広まっていて、とっちゃにめちゃめちゃ怒られました」

秋田での美術学校の2年間もあっという間に過ぎ去り、佳子さんは約束通り青森の実家に帰ります。

「地元の印刷会社にデザイナーとして就職しました。親は実家から通うことを条件に許してくれました。りんごが忙しい時に手伝える様にってことでしょうね。地方の印刷会社のデザイナーでも、仕事は結構あるんです。農協のダンボール箱のデザインとか、桜まつりとか地元のイベントのポスター作ったりとか。とあるりんごジュースのラベルもデザインして、それは東京でも今も見かけます。彼氏ですか? 彼は福島の出身で卒業後は福島に戻ったので、福島と青森での遠距離恋愛になりました。半年に1回くらい、青森と福島の間を取って仙台でお泊りデート。青森から秋田に行って、仙台に行って、だんだん都会度が増して南に行っている」

そんなとき、佳子さん一家に事件が起きます。当時、高校3年だった妹さんになんと妊娠が発覚。さらに相手は高校の同級生とのことで、噂は学校だけでなく街中に知れ渡りました。激怒した父親は相手の男子の家に殴りこみます。

りんごの収穫時期は、猫の手も借りたいほどの忙しさだという。

妹の妊娠が思わぬ結果を……!? 【サードウェーブ女子〜アラサー女子上京物語〜】青森・りんご娘の見る夢は、都会の1人暮らし〜その2〜に続きます。