7月某日、東京・銀座。高級ブランド店が軒を連ねる大通りに面する小さな店舗に、早朝から中国人客が列をなしていた。

 午前11時のオープン前から15人ほどの中国人客が店前に集まり、開店直後にはジャンボタクシーが店の近くに到着し、降車した6人の中国人客も我先に駆け込む。決して広くない店内は押すな押すなの大盛況だ。

 ここは流行のバッグを数多く取り揃えるカバン店。しかし、彼らのお目当ては5400円均一の「スーツケース」だ。

 中国人客はみな、真新しいスーツケースを手にして満足そうな表情を浮かべている。このカバン店では多い日には300個のスーツケースが売れるという。

「ここでスーツケースを買ってから銀座でショッピングを始める。日本のスーツケースは“安い”“丈夫”“おしゃれ”の三拍子揃っていて最高だ」(訪れた中国人客)

「中国から持ってきたスーツケースは1つだけ。出国時の手荷物も減るし、中国のモノより高品質なので一石二鳥だ」(スーツケースを2個買った中国人客)

 スーツケースを購入した中国人家族に同行したところ、その足で高級ブランド店からドラッグストアまで精力的に銀座を回り、新品のスーツケースは爆買い品であっという間に満杯になっていた。

 銀座を取材して歩くと、大挙して押し寄せる中国人客にうんざりしている店も少なくない。そうした中で、このカバン店は「彼らの荷物はカバンに入りきらないのでは」といち早く気付き、店内に中国語の表示を入れるなど態勢を整え、売り上げを大きく伸ばした。

「儲かるのはデパートや高級ブランド店やドラッグストアだけ」と思い込んでいたら商機を逃すことになることを教えてくれる。

 ただし、この新たな爆買いビジネスによってお馴染みのマナー問題も生じている。カバン店の外では買ったばかりのスーツケースを開けて、道端に座り込んで土産品や荷物をせっせと詰め込む中国人客の姿も多く見られた。

「中国人客は人の流れを気にせず、狭い歩道でも堂々とスーツケースを開いて周囲を占拠するので迷惑しています」(銀座の路面店店員)

※週刊ポスト2015年8月14日号