今年活動の節目を迎えるミュージシャンが実に多い。昨年はTHE ALFEEの40周年、TM NETWORKの30周年、GLAYの20周年などがあった。今年も布施明の50周年や山下達郎と中島みゆきの40周年など華やかだ。記念年を迎えたミュージシャンを並べるだけで音楽シーンの移り変わりが見えてくる。

 例えば山下達郎は日本における現代ポップの源流の一つとも言われるシティポップに名を連ね、制作面ではガレージスタジオの草分け的存在とも知られ、更には「クリスマス・イブ」に代表される名曲も数々と生み出した。誕生から数十年経った楽曲は今も色褪せていない。そして、その5年後には松田聖子に代表されるアイドル歌手が登場する。

 更にその5年後にはロック界の繁栄を象徴するようにTHE BLUE HEARTSやSHOW-YAが産声を上げた。このように名前を連ねることだけでも時代の変遷が映し出される。そこで周年を迎えた、或いは迎えるミュージシャンやバンドの一部を以下に紹介して時代の移り変わりを見ていきたい。

■50周年を迎えた布施明

布施明の50周年記念セルフカバー「プレミアムセレクション〜思いの丈 すべて込め〜」

 まずは、50周年を迎えた布施明(67)だ。言わずと知れた超が着くほどの大御所だ。「シクラメンのかほり」などのヒット曲で知られ、若い世代にはモノマネ番組で知ったという人も多いだろう。伸びやかで気品のある歌声が特徴で紅白歌合戦には25回出場し勇退した。

 今年3月25日には記念アルバム『プレミアムセレクション〜思いの丈 すべて込め〜』を発売、前記の「シクラメンかほり」などをセルフカバー。哀愁漂う美しい歌声を披露している。この年は美川憲一(68)や千昌夫(68)もデビューしている。森進一(67)は翌年に歌手デビュー。

■山下達郎や中島みゆきの偉才

 40周年を迎えるのは山下達郎(62)と中島みゆき(63)たちだ。誰もが知っている大御所。山下は昨年発売した「クリスマス・イブ」が29年連続TOP100チャートランクインという偉業を達成。そして、ニューアルバム『SONGS -40th Anniversary Edition-』が7月8日に発売予定。

 中島もその時代を映し出す音楽性は多くの人の心をつかんでいまもなお人気だ。今秋に東京と大阪でコンサートを開催予定だ。この2人に共通するのは個性の2文字だ。現代ポップの草分け的な存在であり、また唯一無二でもあるということが長くトップに君臨し続けられ る要因のひとつである。

 テレビ、ラジオから流れてくる声を聴いただけで、すぐにわかるこの個性は最強の武器だ。そして、2人ともソングライターとしても超一流ということを忘れてはならない。

■アイドル歌手時代の幕開け

 35周年には松田聖子(53)や山下久美子(56)、佐野元春(59)たち。バンドではハウンド・ドッグやラッツ&スターの前身のシャネルズなど。前者3人の名を見て思い浮かべるのは、アイドル歌手時代の到来と、バンド出身者ではない純粋なソロロック歌手の登場だ。

 アイドル時代の幕開けを象徴するようにこの年は河合奈保子や田原俊彦、近藤真彦もデビュー。翌年には松本伊代や薬師丸ひろ子、更にその翌年は、松本伊代、シブがき隊、小泉今日子 、中森明菜、堀ちえみ、早見優、石川秀美がデビューした。

 また、今は亡き村下孝蔵さんもこの年に活動を始めた。

 今年の動向をみると松田は6月10日にニューアルバム『Bibbidi-Bobbidi-Boo」を発売、山下は先月29日に行われたSHOW-YA主催のイベント『NAONのYAON2015』に出演したのも記憶に新しい。7月には東京丸ノ内COTTON CLUBでスペシャルライブを行う予定だ。佐野は35周年記念として3カ月連続で新曲を発表する。現在第2弾となる「境界線」をリリースし たばかりだ。

■バンドブームの到来

結成30周年。今も変わらない人気のブルーハーツ。30周年記念盤には「メルダック盤」と「ワーナー盤」の2枚組

 30周年を迎えるアーティストには、夏の定番TUBEや女性ハードロックバンドのカリスマSHOW-YA、メタル界の女王浜田麻里(52)、渡辺美里(48)、今井美樹(52)などがいる。米米CLUBやおニャン子クラブなどもこの年代に登場してきた。

 LOUDNESSがレコード大賞優秀アルバム賞を受賞するなどメタルバンドの人気があり、ここからロックバンドブームが到来した年と言っても過言ではない。この年には甲本ヒロトと真島昌利がTHE BLUE HEARTSを結成し、翌年には奥田民生率いるUNICORNも結成されるなど85年を境に今の音楽業界に足跡を残したバンドが数多く出てきた。

 今年は、TUBEが、作詞作曲にB’zのTAKAMATSUMOTO(54)やGLAYのTAKURO(43)など、豪華ゲストを招いた2枚組アルバム『Your TUBE + My TUBE』を発売する。毎年恒例の夏の野外スタジアムライブも決定し、横浜スタジアム、阪神甲子園球場で行われる。この横浜と甲子園は連続25回公演を迎えるというのだから驚きだ。

 SHOW-YAも30周年記念リリース第2弾として5月27日にカバーアルバム『Glamorous Show II』を発売予定。浜田麻里も30周年記念バンドスコアの発売や『30th Anniversary Mari Hamada Live Tour -Special-』と題したDVD&Blu-rayを発売。今年は『LOUD PARK 2015』に出演する。

 渡辺美里は4月に19枚目のアルバム『オーディナリー・ライフ』を発売し、さらに5月2日・5日には『30th Anniversary「春の美里祭り 30th Revolution」』と題したライブも行う。今井もニューアルバム『Colour』を5月20日にリリースし『今井美樹 30th Anniversary CONCERT TOUR 2015 “Colour”』を10月から行う予定だ。

■音楽の多様性

初の弾き語りカバーアルバム『魂リク』で初登場1位を獲得した福山雅治

 25周年には福山雅治(46)や沖縄出身のBIGIN、さらに槇原敬之(45)。この頃からコンピューターと生演奏、そしてラップなど多ジャンルとの融合が多くみられるようなり音楽としての幅が広がった。80年代の音楽性を継承しつつも、更にメロディやアレンジをブラッシュアップしてきた。そしてBIGINをはじめ、たまやFLYNG KIDSなどTBS系列『三宅裕司のいかすバンド天国』通称“イカ天”から出てきたバンドが活躍した。

 今年は、福山が弾き語りカバーアルバム「魂リク」を4月8日に発売したばかり。6月24日には同アルバムのアナログ盤も発 売される。1990年のデビュー以来初のアナログ盤だ。

 BIGINも同じく6月24日に25周年記念リリース第2弾としてニューアルバムを発売予定。去る3月にはBIGINの故郷である石垣島での25周年記念ライブも行われたばかり。

 槇原も5月27日にデビュー25周年第3弾となる新曲「超えろ。」をリリース。25周年全国ツアー『Makihara Noriyuki Concert Tour 2015 “Lovable People”』も3月からスタートしている。

■小室ファミリーの全盛

華原朋美の「ALL TIME SELECTION BEST」(初回盤)ジャケット

 20周年には、平井堅(43)や相川七瀬(40)、そしてglobeや華原朋美(40)、BONNIE PINK(42)、V6などがいる。この年は歌唱力や独自の世界観をもった歌手が生まれた一方で相川のように当時は下火になったいた女性ロック路線で奇抜性を狙ったものもあった。そしてなんといっても小室ファミリー全盛期である。その代表格が華原であった。

 今年の活動では、平井は5月12日・13日にZepp Tokyoで20周年ライブを、相川は昨年末に20周年に先駆けてトリビュートアルバムを発売。globeもお祝いソングとして新曲を制作中。20周年Twitterアカウントも開設された。

 華原も1998年10月に発売された「daily news」以来となる小室哲哉作曲による新曲「はじまりのうたが聴こえる」を5月20日にリリースする。6月にはオールタイムベストの発売や7月から全国16カ所公演予定の『TOMOMI KAHARA 20thAnniversary TOUR KAHARA’s HISTORY @19952015』を開催する。

 BONNIE PINKは自身のブログによればニューアルバムを制作中。5月27日発売のSuperflyの5枚目アルバム『WHITE』に作詞作曲で参加した。曲のタイトルは「Woman」。V6はデビュー20周年突入第一弾シングル「Timeless」を5月8日に発売。更に約2年振りとなるツアーも8月からスタートする。昨年は紅白歌合戦に初出場したことでも話題を集めた。

■実力派・個性派女性シンガー

 そして、15周年には椎名林檎(36)、鬼束ちひろ(34)、矢井田瞳(36)、AI(33)、LOVE PSYCHEDELICOなど実力と個性溢れる女性アーティストが迎える。彼女らがデビューした2000年は、90年代後半から登場したマキシシングルがこの頃から定着しはじめ、「Play Station2」の発売によってDVDも一般に普及してきた年代でもある。

 MISIAや宇多田ヒカルなどR&Bを基盤とするアーティストが人気があり、浜崎あゆみのような中高生のカリスマも登場した。このようなアーティストが人気絶頂のなか、椎名林檎は個性的な音楽性で人気を集めた。ちなみに300万枚に迫る売り上げを記録したサザンオールスターズの「TSUNAMI」が発売されたのもこの時。

 また、今では中田ヤスタカ作のエレクトロテクノポップの代表格で世界的人気を集めるようになったPerfumeが結成されたのもこの年だった。

 今年は、椎名は『FUJI ROCKFESTIVAL』にも出演予定で、8月には台湾でのライブ『椎名林檎(生)林檎博’15 -垂涎三尺-』も行われる。鬼束は、新曲「スター・ライト・レター」をFC会員限定リリース、矢井田も6月から『弾き語りTOUR2015〜ヤイダヒトリ〜』と銘打った初の弾き語りツアーを全国15会場で開催される。

 AIは昨年、ディズニー映画『ベイマックス』の日本版エンディングソングに「Story(English Version)」が起用されていた事も記憶に新しい。

 LOVE PSYCHEDELICOは2月にベスト「THE BEST I」と「THE BEST II」を発表。それに伴った全国ツアーも5月から始まる。今回はバンドメンバーにあのYMOの高橋幸宏も参加することで話題となっている。

■アイドル戦国時代

「きっと、星のせいじゃない。」日本版イメージソングを歌うAAA

 10周年を迎えるは、AKB48、AAAやアニソン歌手のMay’n(25)、そしてUVERWORLDなどだ。アイドルグループ時代の再来の礎はモーニング娘。が作ったが、別角度から登場したのがAKB48だった。当時は「アキバ48」とも間違われ「パンツみせ集団」とも揶揄されたがいまや知らない人がいないほどの人気を誇る。また、同時にアイドル戦国時代の到来を意味した。一方でロックはブームを終えた青春パンクから移り変わったエモが流行り始めた。

 そのAKB48は7年前に劇場10周年記念ライブチケットをフォトアルバムの景品として発売していたことでも話題となった。そのフォトアルバムは限定2000冊のプレミアムチケット。既に完売している。

 AAAは現在、7カ月連続リリース、10周年記念アリーナツアー『AAA ARENA TOUR 2015 10th Anniversary -Attack All Around-』が1日にスタートしたばかり。May’nは初のベストアルバムのリリースも決定し、8月には日本武道館でのコンサートも行われる。

 UVERWORLDもデビュー10周年にあたる7月から18公演の全国ツアーがスタート。9月には国立代々木第一体育館で女性限定や神戸ワールド記念ホールで男性限定ライブも行われる。「男祭り」に関しては過去最大規模のライブになる模様。

 と、これだけみても多くのミュージシャンやバンドが2015年にアニバーサリーイヤーとして迎えている。どんなことでも10年、20年、更には40年と続けることは簡単なことではない。ましてや止まる事なくトップであり続ける事は並大抵のことではないだろう。そのアーティストが持つ、魅力やスキルそして人間性などトータルバランスが求められる。ファンやスタッフ、内外の人達からの信頼がなければ成り得ないはずだ。

 2016年には浜田省吾(62)が40周年、徳永英明(54)が30周年、久保田利伸(52)が25周年、絢香(27)やGReeeeNが10周年を迎える。GReeeeNは既に来年の10周年に向け『9周年だヨ!10周年目前イヤー!〜来年僕たち10歳です〜』という企画がスタートしている。他のアーティストたちもどんな趣向を凝らしたアニバーサリーなイベントを用意しているのか期待が高まる。  【上村順二】