そろそろ「プログラマー35歳定年説」を徹底論破しとくか(書架とラフレンツェ)

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今回はaliliputさんのブログ『書架とラフレンツェ』からご寄稿いただきました。
■そろそろ「プログラマー35歳定年説」を徹底論破しとくか(書架とラフレンツェ)
世の中に流布している「プログラマー35年定年説」は、大きく以下の3つに分類できる。

・ プログラマーは激務なので、35歳を過ぎると体力低下のために続けられなくなる(体力低下説)
・ プログラマーは常に新しい情報を吸収しなければならないが、35歳を超えると脳の働きが低下して新しいことを覚えられなくなるために続けられなくなる(学習能力低下説)
・ プログラマーは35歳を超えると開発ではない業務を求められるようになるので、技術職としてのプログラマーのキャリアが途絶える(マネージメント原因説)

以下、ひとつずつ検証していく。

●体力低下説
まず1つ目の「体力低下説」だが、これについてはそれほど深く考る必要がなさそうに思える。周知の通り気力や体力には個体差があり、若くても元気がないひともいれば歳をとっても元気なひともいる。また、35歳あたりの体力低下の原因としては、単純な加齢というよりも生活習慣の要因の方が大きそうだ。普段から食事や睡眠をしっかり取り、適度な運動をしているならば、35歳でもどうということはないだろうし、そうでないならば25歳だって成人病になったり過労死する人もいる。

また「プログラマーは激務」も、一体どこまで当然としてよい話なのだろうか?確かに過酷な開発現場も多いだろう。しかしプログラマーの仕事の本質は不眠不休コンテストではない。休まずに働けるのが良いプログラマーの条件ならば、人間ではなくキリンでも雇っておけばよいのだ。若者しか勤まらないような過酷な開発現場は単にマネジメントが失敗している一部に存在するだけであり、専門職としてのプログラマーがその専門性を発揮するのに不適切なところだ。

したがって体力低下説は、例外的な一部の不摂生プログラマーや破綻した開発現場にのみ適用される限定的な説であり、元よりそのような専門性を語るに値しない領域の話をプログラマー全体の話として一般化できない。

なお、不幸にしてそのような悲惨な現場に放り込まれてしまった場合のサバイブ術については、事項で少し触れる。

●学習能力低下説
次に「学習能力低下説」だが、最近の脳科学の研究成果によると、35歳を超えての学習能力低下は認められていない。もちろん単純な記憶能力は年齢とともに低下するが、論理的思考力や創造性などはむしろ年齢にしたがって上昇するとの研究報告もあり、35歳程度での年齢での学習能力低下を裏付けるエビデンスは現在のところ見つかっていない。
もしプログラマーに求められる能力が丸暗記ならば、プログラマーの定年は35歳どころか20歳だ。しかし知識もさることながら、経験に裏打ちされた問題解決力や創造的思考が重要ならば、65歳くらいまでは常に新しい知識を取り入れつつ経験を積んでいるベテランほど専門性が高まる。

これらの脳科学における研究成果は、そのものズバリ脳と学習との関係について現在までの研究成果を包括的にまとめた『脳からみた学習』*1が大変参考になる。

*1:「脳からみた学習 −新しい学習科学の誕生」 OECD教育研究革新センター(著) 『amazon』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/475033314X/

脳科学の知見から加齢と学習能力の関係、右脳-左脳論のウソ、学習したい内容に対する効率のよい学習方法についてなどが豊富な実証研究結果と共に紹介されており、読みごたえがある。

この本によると、学習能力は新しいことを学んだ経験を積めば積むほど高まる。したがって、プログラマーとして必要な学習能力を維持向上したければ、常に新しいことを学ぶべく勉強を続ける必要がある。