朝日新聞後任社長選びは混沌 販売出身起用説、はては「役員全員退任論」まで出て
朝日新聞社の木村伊量(ただかず)社長が2014年12月5日の臨時株主総会で退任することが明らかになり、焦点は後任人事に移った。
木村氏は、原発をめぐる「吉田調書」や従軍慰安婦に関連する「吉田証言」問題の責任を取る形で退任するが、後任選びは難航しそうだ。
複数の役員が責任を取って退任する
木村氏は社内向けウェブサイトに10月31日付で掲載した文書の中で、11月中旬に社長退任を発表し、12月5日に新体制をスタートさせる考えを示した。
具体的には12月5日の臨時株主総会で新役員を選び、直後の取締役会で新社長を選ぶ。株主総会では木村社長のほか、編集担当を解職された杉浦信之取締役(社長付)ら複数の役員が退任する見通しだ。
次期社長候補として取りざたされているのが、政治部出身の持田周三常務(大阪本社代表、大阪中之島プロジェクト担当)、経済部出身の和気靖常務(広告・出版担当)、社会部出身の佐藤吉雄常務(技術統括・メディアラボ担当)、の3人とされる。
しかし3人ともに社内から反発があり、決めかねている状態だという。
そうした中で「役員全員退任論」もささやかれている。
新社長は総会後の取締役会で互選で選ばれるが、「続投した役員は『吉田調書』『吉田証言』問題に責任を負っており、新社長を決める正当性がない」という指摘も根強いからだ。
仮に「全員退任」の場合は、人材確保面で不安があり、窮余の策として「一度は関連会社に転出した人を呼び戻す」といった奇策もありうる、との憶測も出ている。
販売出身から起用するという案も
これ以外にも、14年6月まで専務(東京本社代表)を務めた飯田真也・上席執行役員が役員に返り咲いて社長になるという説もある。飯田氏は販売局出身で、「編集と経営を分離する」という観点から飯田氏を推す声も一部にはあるようだが、「無理がある」と、否定的な声が多い。
このように情勢は流動的だが、残された日数は非常に少ない。会社法では、株主総会が開かれる2週間前までに株主に招集通知を送ることを定めている。招集通知には議案「取締役選任の件」が含まれるため、取締役候補者のプロフィールを掲載する必要もある。株主総会の2週間前は11月21日だが、印刷にかかる日数を考えると、11月中旬には総会にかける人事を決めておく必要がある。