「スライダー部門」で1位に選ばれたダルビッシュ有【写真:Getty Images】

メジャーの全監督によるアンケートでのランキング

 メジャーリーグにおいて日本人投手の存在感は今までにないほど大きくなっている。アメリカの野球総合誌「ベースボール・アメリカ」が「2014年版メジャー最高のツール(スキル、能力)」を特集。右肘の靭帯断裂で離脱中のヤンキース・田中将大投手が、メジャーの全監督によるアンケートで選出された「ベストピッチャー部門」の2位に選ばれたが、その他の日本人投手も各部門のランキングTOP3に入っている。(※成績はすべて6日時点)

「スライダー部門」で堂々の1位に選ばれたのはダルビッシュ有投手だ。驚異的な空振り奪取能力を誇る決め球は、すでにレンジャーズの絶対的エースの代名詞となっている。

 昨年は、スピードや軌道の違いで数種類あるとされるスライダーを武器に277Kで奪三振王に。今季の175奪三振は現時点でリーグ4位となっているが、デビッド・プライス(199)、フェリックス・ヘルナンデス(186)、コーリー・クルーバー(177)の上位3人はいずれもダルビッシュより登板が3試合多い。9イニングあたりでの奪三振数を表す奪三振率11・22は、2位のクリス・セール(ホワイトソックス)の10・18を上回りリーグトップだ。

「スライダー部門」の2位タイには、マックス・シャーザー(タイガース)、セールの2人が入っている。興味深いのは、これが昨年のリーグ奪三振ランキングと同じ顔ぶれであるという点だ。トップのダルビッシュに続き、シャーザーが240個で2位、セールが226個で3位となっていた。全員が速球の威力でもトップクラスであることは間違いないが、メジャーの「奪三振マシーン」たちが決め球とするスライダーの中でも、ダルビッシュがNO.1の切れ味を誇っている。

四球を与えただけで驚かれる岩隈

 また、「コントロール部門」では岩隈久志投手が2位に入った。1位はレイズからタイガースにトレードされたデビッド・プライス、3位は今季ヤンキースからツインズに移籍して活躍中のフィル・ヒューズとなっている。

「キング」の異名を持つフェリックス・ヘルナンデスと岩隈の先発2枚看板は、今やマリナーズの生命線。岩隈は球界を代表する同僚右腕と遜色ないパフォーマンスを見せている。

 特に制球力は特筆もので、今季の与四球数(11個)、9イニングあたりの平均与四球0・79はいずれもメジャー最少の数字。ちなみにプライスの平均与四球は1・15で同5位、ヒューズは0・88で3位と、数字上はいずれも岩隈が上回っている。

 岩隈は7月には球団史上2番目に長い35回2/3に渡って連続無四球を記録。7回6安打2失点の好投で今季9勝目を挙げた同29日のインディアンス戦で初回に四球を与え、記録が途切れたときには、マクレンドン監督が「打者を1人歩かせるなんて……、ガッカリだ(笑)」と冗談交じりにコメントしたほどだった。

 奪三振はリーグ28位の101個ながら、1つの三振を奪うまでにいくつの四球を与えたのかを表すK/BBでは9・18でMLBトップ。メジャーで重視される評価基準で非常に高い数字を残している。まさに精密機械と呼ぶにふさわしいコントロールだ。

セーブ数で自己記録を更新し続けている上原

 そして、「ベストリリーバー部門」では、レッドソックスの上原浩治投手が3位に入った。

 1位は今季リーグ最多の32セーブをマークしているグレッグ・ホランド(ロイヤルズ)で、2位は直球とナックルカーブを武器に防御率1・46、WHIP(1イニングあたりの被安打+与四球)0・72、奪三振率13・30と高水準の数字をマークしているデリン・ベタンセス(ヤンキース)。今季好調の2人より下にランクされているが、リーグトップのリリーバーであることは数字に表れている。

 上原は今季、6日までに自己新となる23セーブをマーク。チームが低迷しているためリーグ5位タイとなっているが、10セーブ以上を記録している投手の中で防御率1・39はリーグトップ、与四球6はリーグ最少だ。昨季途中にクローザーに指名されてから抜群の安定感は変わっていない。世界一となったポストシーズンでのピッチングも鮮烈だった。

 今季は20試合連続無失点も記録。さらに、昨年7月9日から今年6月17日まで公式戦で31試合連続セーブ機会での失敗がなかった。今オフにフリーエージェント(FA)となるため、7月31日のトレード期限までに放出されるとの噂もあったが、レッドソックスは最強守護神に対するオファーをすべて固辞。来季は全盛期のマリアノ・リベラの年俸1500万ドル(約15億3000万円)に迫る額での残留オファーを出す可能性が高くなっている。名実ともにメジャー屈指のクローザーとして評価されていることは間違いない。

 負傷者続出のヤンキースで開幕からただ1人先発ローテーションを守っている黒田博樹投手、レッドソックスのブルペンを上原とともに支える田澤純一投手らを含め、どのチームにおいても日本人投手の存在は欠かせないものとなっている。それぞれの特長を生かし、ファンだけでなく、各球団の監督からも高く評価されている男たちが、メジャーを席巻している。