代表戦終了後は、自身の出来不出来に関係なく、報道陣の前を素通りするのが本田圭佑(27)の見慣れた光景。それはカルチョの国・イタリアに渡っても不変だった。その重い口がようやく開かれたのは、4月5日のこと。イタリアで最も権威のあるスポーツ紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』でのインタビューだった(聞き手はACミラン担当、アレッサンドラ・ボッチ記者)。ACミランに入団して早3カ月。沈黙を貫いてきた男がついに吼えた。

――セードルフ監督は、日本代表でのトップ下ではなく、右サイドの中盤で起用しているが?

本田「正直、最初は右サイドでのプレーは居心地が悪かった。そんななか、カカは真ん中で上手にプレーしていた。僕はまずミランで定位置を掴む必要があるし、最初のころと比べたらパフォーマンスはよくなっていると思う。いちばん好きなのはトップ下だけど、セードルフ監督は僕には右でプレーする適性があると言っている。僕が監督に合わせればいいだけ」

 本田の出だしは好調だった。1月15日のカップ戦、スペツィア戦では早くもゴール。メディアもサポーターも“救世主”と讃えた。だが、徐々に連携面で歪みを見せると、賞賛はいつしかブーイングへと変わり、「本田はまだミランに溶け込んでいない。報道陣にも溶け込んでいないように、イタリアの環境に慣れることができていない。彼のプレーは観られるような状態ではない」など辛辣な見出しも躍った。

――イタリアのメディアは辛口で有名だが、どう映る?

本田「批判は嬉しくないが、どう書くかは記者の自由。むしろ僕はプレッシャーがかかったなかでプレーするのが好きだ。それに日本人はとても我慢強いんだよ」

――あなたはいつもネクタイを締め、完璧にスーツを着こなしているけど、2つの腕時計にはどんな意味が?

本田「ひとつは日本時間に、もうひとつはイタリア時間に合わせている(笑)」(本田の時計はいずれもカルティエで、サントス・デュモン4万1,400ユーロ〈約584万円〉と、タンク1万7,400ユーロ〈約245万円〉)

――日本のスター選手として、大きな期待は重荷になっているのでは?

本田「日本での僕はスターじゃないし、CSKAでもそうだった。でも、プレッシャーを感じるのは好きだし、期待されるのも好きだ。僕はそういう性格なんだ」

 インタビューは通訳を介さず、英語でのやり取りでおこなわれた。そのなかで、本田はときに沈黙を入れながら、丁寧に答えた。インタビュー終了後、担当したボッチ記者に本田の印象を聞いた。

「まず思ったのは、プロフェッショナルだということ。それに礼儀正しく、慎重に言葉を選びながら応じてくれた。ときに、こちらを警戒するようにね(笑)。性格的には慎重という言葉があてはまるのでは。日本人のイメージどおり。正確に言葉を選ぶところ、ちょっと硬い感じがね。ふだんは、もっとリラックスしたほうがいいわ」

(週刊FLASH 5月6日号)