マイホームの購入は消費税増税前と後ではどちらがトク?

写真拡大

消費税は、2014年4月に8%、15年10月に10%へ引き上げ予定。住宅の場合、土地は非課税だが、建物には課税されるため、増税後は大きな負担増となる。

そこで政府は、住宅ローン減税を拡充し、需要を下支えすることを決めた。現在の制度では、年末の住宅ローン残高のうち2000万円までが対象で、1%の控除が受けられる。2000万円×1%で年間最大20万円の控除だ。これが10年間、最大200万円の減税となる。

これに対し、消費税が増税される14年4月以降は、対象となる年末のローン残高が4000万円まで引き上げられる。その結果、年間最大40万円、10年間で最大400万円の減税となる予定だ。この差は大きい。

ここで悩ましいのは、住宅を買うなら、消費税の増税前が有利か、増税後が有利か、ということだ。

実際にどちらがトクなのかは、年収や買う物件の価格によっても異なる。おおよその目安を試算した(図表)。

図表上は、住宅ローン減税の額が、改定前と改定後でどの程度変化するかを計算したものだ。住宅ローン減税額は、自分の支払った所得税と住民税の合計額が限度額となるため、年収別に計算した。たとえば、年収700万円の家庭の場合、住宅ローンの減税額は、現状では、年間20万円であるのに対し、改定後は36万4200円となり、10年間の合計では、改定後のほうが164万2000円有利になる。

図表下は、消費税の増税による負担増を物件の価格ごとに試算した。たとえば、5000万円の物件を買う場合、現状の消費税額は125万円だが、8%への増税後は、75万円の負担増となる。

では、前述の年収700万円の人が5000万円の物件を購入する場合、消費税の増税前と後ではどちらが有利なのか。

このケースの場合、住宅ローン減税の増額が164万2000円であるのに対し、消費税の負担増が75万円となるので、消費税の増税後に購入したほうが有利という結果になる。

ただし15年10月に消費税が10%になると、消費税額が125万円の負担増となり、住宅ローン減税の増額と消費税の負担増の差が小さくなる。

よって、14年4月から15年9月の間に引き渡しを受けるのがチャンスと言える。

同じように、ご自身の年収と購入予定物件を組み合わせて、損得を計算してみてほしい。ただ、図表は計算を簡略化させるため、家族構成などは一定の基準に統一している。正確に損得を計算するのであれば、税理士などに依頼したほうがいいだろう。

税負担による損得は以上の通りだが、物件価格の動向や住宅ローン金利によっても大きく損得は変わってくる。

消費税の増税後に、需要が冷え込めば、不動産業界では値引き合戦が行われる可能性もある。増税後に売れ残り物件を探し、値引き交渉をすれば、さらに有利に購入することができる。

逆に住宅ローン金利は、今後、上昇する可能性もある。税額の損得だけにとらわれず、柔軟に判断するという気持ちも重要だ。

(税理士 宮田英樹 構成=向山勇 図版作成=ライヴ・アート)