15日(土・現地時間)にラスベガスのハードロック・ホテル&カジノ内ザ・ジョイントにて開催されるTUF 16 Finale。マイク・リッチーによるカナダ人初のTUF王座戴冠を阻止せんと立ちはだかるのは、米軍現役レンジャーにして強力なレスリング力を誇るコルトン・スミスだ。

現在25歳のスミスは、テキサス州のフォートフッド米軍基地に所属する現役の二等軍曹にしてレンジャー(=エリート歩兵)。高校時代はレスリングで活躍し、その下地を買われて軍の格闘技コーチを任せられ、フォートフッド基地を全米軍格闘技大会三連覇に導いたという実績も持つ。配属されたイラクから帰還後の2009年末にスタートさせたMMAのキャリアは3勝1敗とまだ浅い。つまり、TUF収録後に大いに伸びている可能性もある。

現役米軍兵士として初のTUF登場を果たしたスミス。第一回放送のイリミネーション・バウトでは、試合開始直後にグローブタッチをすると見せかけて、腕を上げた相手にダブルレッグ。兵士の誇りに似つかわしくない先制攻撃でダナ社長やコーチ二人のヒンシュクを買ったものの、そのままポジショニングで相手を圧倒して判定勝利してハウス入りを決めた。

4位指名と決して前評判は高くなかったもののチーム・ネルソンに加わったスミスは、その後も強力なレスリングベースを活かしてのトップコントロールで判定勝ちを重ねていく。 アルコールを口にせず、今シーズンも頻発したハウスでの酒がらみの乱闘からは賢明にも距離を置いていたスミスだが、チーム・カーウィン側の選手の鶏肉を勝手に食べてしまうという悪戯をすることもあった 。

また、2回戦で戦ったブラジル人柔術家、イーゴー・アラウージョと計量後に向かい合った際には、スミスのかけた言葉をアラウージョが家族を侮辱されたと思い込んで激怒し、乱闘寸前に発展するハプニングも見られた。勘違いから生まれたこの遺恨試合で、スミスはアラウージョのガードからの攻撃を完封。ハーフガードをレスリングのウィザー(=かんぬき)とダースチョークの仕掛けで潰し、巧みな体重移動とベースキープを披露している。最後はマウントを奪って圧倒的な判定勝利と、柔術家対策が万全であることを明らかにした。

準決勝のジョン・マンリー戦においても、スミスはクリンチからのテイクダウンとトップキープで最初の2Rを圧倒。最終3Rは安全策をとり、ひたすらサークリングに費やして捨てるという試合巧者ぶりも見せつけて、貫録の判定勝ち。4試合連続の判定勝利でフィナーレ進出を決めたスミスは、カメラに向かって「この試合を米国のために海外で戦っている全兵士達に捧げる。彼らこそがヒーローだ。それに比べたら俺がやっているMMAなんて容易いもんだ」とアピールしてみせた。

決勝の対戦相手がカナダ人のリッチーに決定すると、すかさずオクタゴンに上がり、「米国vsカナダだぜ!」と国際戦を宣言したスミス。決勝戦は、総合力に優れたリッチーの多彩な打撃をいかにかいくぐって近づき、テイクダウンを奪うかが勝利の鍵となってくるだろう。米国ミリタリー・タイムス紙も注目するこの決勝戦。常に勝利を最優先させる合理主義者のスミス二等軍曹が、米国陸軍現役兵士の威信を賭けてTUF制覇を狙う。